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Midnight Grand Orchestraが、1stミニアルバム「Overture」を7月27日にリリースした。
ホロライブ所属のVTuber・星街すいせいと、サウンドプロデューサー・TAKU INOUEによる“ユニバースミュージックプロジェクト”として今年3月に始動したMidnight Grand Orchestra。これまで両者はさまざまな形でタッグを組んできたが、ユニットという形で楽曲を発表するのはMidnight Grand Orchestraが初めてとなる。この記事では、SF的な世界観を持った作品の「Overture」について、そして同ユニットが音楽シーンにもたらす可能性について考察する。
Midnight Grand Orchestra「Overture」は、4月に1stシングルとして発表された「SOS」と先行配信された「Highway」を含む全7曲入りのミニアルバム。すでに公開されている2曲のミュージックビデオやティザー映像が示唆しているように、その楽曲群は1つのコンセプチュアルな世界観に基づいている。
そこにあるのは、スペースオペラ、つまり宇宙を舞台にしたSF冒険活劇的な物語性だ。これまでダンスミュージックをベースにしながら「ALIENS EP」など“宇宙”をテーマにした作品を形にしてきたTAKU INOUE、そしてその名の通り“星”をモチーフにしたVTuberである星街すいせいだからこそ生まれたコンセプトと言える。おそらく、サウンドプロデューサーとボーカリストという立場の違いを超えて両者に共通する価値観や個性がそこにあったからこそ、Midnight Grand Orchestraというプロジェクトが始動したのだろう。
そして2021年9月にリリースされた星街すいせいの1stアルバム「Still Still Stellar」のリード曲「Stellar Stellar」をTAKU INOUEが制作。上記のインタビューによるとオファーがあったのはほぼ同時だったそう。しっとりとエモーショナルな「3時12分」に対して、こちらはドラマティックで派手な展開を持つ1曲になっている。
この曲のポイントは星街すいせい自ら作詞を手がけていることにもある。リリース時のインタビューで星街は「イノタクさんが歌詞を書く予定だったんですけど、『私に書かせてください』と打診して、歌詞を書かせていただくことになりました」と語っている(参照:星街すいせい「Still Still Stellar」インタビュー)。
こうした経緯を経て両者のクリエイティブな面での意気投合があったことがMidnight Grand Orchestraの結成へとつながっている。「Overture」でも、いくつかの楽曲ではTAKU INOUEと星街すいせいが共同で作詞している。Twitterスペースで開催された2人のトークで明かされたことによると、TAKU INOUEが曲の核となるフレーズを用意し、それに星街すいせいが肉付けしていくような制作手法をとっているようだ。
刺激的な展開を打ち出した“攻めた”アレンジを
サウンド面では、Midnight Grand Orchestraと名乗るだけに、オーケストラのような重厚感や壮麗さもイメージしたエレクトロニックポップが主体になっている。ポップスとしてのわかりやすさよりも刺激的な展開を打ち出した“攻めた”アレンジを追求しているのも特徴だ。それがもっとも表れているのが1曲目の「Never Ending Midnights」だろう。ハンドクラップと声による荘厳な始まりから「終わらない夜をあげる」と星街すいせいが歌うところで変則的なビートとシンセフレーズが絡み合い、一気にテンションを上げる。
「SOS」は爽快なフューチャーベースのビートとダイナミックなストリングスが印象的なエレクトロナンバー。歌詞に「アレグロ背負って」というフレーズがあるが、「アレグロ」というのはMidnight Grand OrchestraのアーティストビジュアルやMVで星街すいせいが持っている“武器”のことを指すようだ。
「Rat A Tat」はファンキーなベースラインがチャームポイントのディスコナンバーだ。フィルターハウスのテイストを持つフレーズがさまざまなポイントにちりばめられているのは「Discovery」期のDaft Punkへのオマージュといったところだろうか。オーケストラのチューニングに和音が重なっていくインストゥルメンタルの「Tuning (interlude)」を挟み、「流星群」はエレピの揺れるようなサウンドにローファイなビートを組み合わせたチルポップな1曲。吐息混じりのボーカルが生かされている。
「Highway」は8ビートとギターのアルペジオを軸にした曲。2000年代ギターロックのミディアムバラードを彷彿させるようなサウンドをMidnight Grand Orchestraなりのやり方でよみがえらせたような感もある。Twitterスペースでのトークによると、TAKU INOUEが高校生だった20年ほど前に書いた曲らしい。この曲だけでなくすべての収録曲がそうなのだが、3、4分の長さでありながらビートやアレンジのスタイルがどんどんと展開し、飽きさせない曲調になっているのもポイントだ。
2018年よりYouTubeを中心とした配信活動を行っているバーチャルYouTuber。2019年5月よりホロライブプロダクション内に設立されたレーベル・イノナカミュージックに所属したのち、同年12月に女性バーチャルYouTuberグループ・ホロライブに移籍。2021年7月配信リリースのTAKU INOUEのメジャーデビュー曲「3時12分 / TAKU INOUE&星街すいせい」でボーカルを担当した。9月に1stフルアルバム「Still Still Stellar」を発表し、10月には1stソロライブ「Hoshimachi Suisei 1st Solo Live "STELLAR into the GALAXY" Supported By Bushiroad」を開催した。2022年7月には1stソロライブの模様を収めたBlu-ray「Hoshimachi Suisei 1st Solo Live "STELLAR into the GALAXY"」がリリースされた。
「PROUD of」は8月9日にリリースされる1stアルバム「Wings of Artemis」の収録曲。MVは壮大なCGが印象的な映像になっている。監督を務めた映像クリエイターのTsumugiは「今回のMVでは、アルテミスの翼の壮大で優雅な世界観を存分に引き出せるようなVFXを制作しました。まるで神話の物語の一部のような雰囲気を感じて頂ければと思います」とコメントしている。