2021年07月25日23時21分
順風満帆だった数年前には自分で想像できなかったほど、五輪へ至る道は険しかった。「大変だった時期は一つも無駄じゃなかった」。男子66キロ級の阿部一二三は自らの夢、きょうだいの夢を同時にかなえ、心からそう思えた。金メダルには「最高の喜び」が詰まっていた。
妹の歓喜を見届け、「絶対にやってやるぞ」と闘志をかき立てた。世界ランキング4位のマルグベラシビリとの決勝。袖釣り込み腰から大外刈りにつなげて技ありを奪った。残り2分ほどは、前掛かりになる相手の攻めに難なく対処して優勢勝ち。4試合いずれも、優勝候補筆頭の重圧を感じさせない完勝だった。
強引な体勢でも投げ切れる持ち味の担ぎ技は、天性の肩の柔らかさと、猛稽古で培ってきた体幹の強さが礎。早くから東京五輪のホープと目され、2017、18年の世界選手権では連覇。だが、徐々に国内外からの徹底マークに苦しんでいく。「東京五輪まで負けなしでいきたい」。それは理想でしかなかった。
瞬発的に繰り出す技の威力は抜群でも、組み止められると攻め手が狭まった。以前は腰を引いて構える海外選手が多かったが、密着戦を挑まれるシーンが増えた。ライバル丸山城志郎(ミキハウス)が得意とするともえ投げなど、捨て身技の受けにはもろさも出た。
「逸材」と言われ続けてきたが、本人はそれほど才能に恵まれたとは思っていない。座右の銘は「努力は天才を超える」。ひたむきに課題を見詰めた。
捨て身技を食わない重心移動を体に染みこませ、昨年12月の丸山との五輪代表決定戦では24分、極限の緊張感の中で攻撃をしのぎ切った。担ぎ技の対となる足技を磨く過程では、今大会60キロ級で金に輝いた所属先の先輩、高藤直寿の助言も仰いだ。意識を高めてきた連続技は、五輪の大舞台で何度も披露した。
優勝が決まった瞬間、表情を変えず少し上を向いた。野望がある。尊敬する野村忠宏さんを超える五輪4連覇。この金メダルは、一二三が描く壮大な夢への真のスタートでもある。
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