8月15日にWOWOWにて配信されるスペシャル番組に出演したボクシングのWBA・IBF世界バンタム級タイトルマッチを終えた井上尚弥(大橋ジム)が取材に応じ、去る6月7日に行なわれた同級3団体統一戦で破った前WBCバンタム級王者ノニト・ドネア(フィリピン)について語った。
百戦錬磨の相手が「これまでに受けてきたどんなパンチよりも(対応が)難しくて、厄介な一発だった」と振り返ったように、この大一番での井上は図抜けていた。1回の終盤に右のカウンターストレートでダウンを奪うと、2回に入ってからよりギアを上げる。最後はふらついていたドネアに、渾身の左フックを当て込んで勝負を決めた。
約2年7か月ぶりの再戦で、わずか264秒でのTKO勝ちを収めた。そんなライバルとの一戦は「結構、見てます」と語った29歳のチャンプは、「パーフェクトだったんじゃないですか。あらためて見ても」と自信ありげに語った。
「試合だけじゃない。試合に向けたトレーニングの段階、控室から入場までを含めて、自分の気持ちの待っていきかた的にも良かったですね。本当に全部が良かった」
心身ともに充実していた。だからこそ、リベンジを誓って向かってきた相手も凌駕した。
「不安はバンタムに(階級を)上げた時もありました。数キロですけど、やっぱりそこの差っていうのは凄い差だと思ってる。フィジカルも耐久性も凄く変わってくる。楽しみもありますけど、不安な気持ちがある。ただ、その不安があるからこそ、突き詰めていける。もちろん、自信もあります」
35歳での「無敗引退」を公言している井上。壮大な目標に向けたなかで、ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)やステファン・フルトン(アメリカ)といった多士済々の階級へのステップアップは、ともすればリスキーだと言える。
しかし、「もっと良いパフォーマンスができるんじゃないかって思います」と語る男の表情は、こちらに大きな期待を抱かせる。モハメド・アリやマイク・タイソン(ともにアメリカ)といった猛者たちも叶えられなかった夢を果たせるのではないかと――。
構成●THE DIGEST編集部
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