日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が2020年12月にカプセルを地球に持ち帰ったわね。遠く離れた小惑星で採取した砂や小石などの試料が入っているらしいけれど、そこから何が分かるのかしら――。惑星探査の現状と今後の見通しについて、小玉祥司編集委員が大友由美さんと奥村彩香さんに説明した。
「はやぶさ2」の帰還が大きな話題になったけど、どの点がすごいのですか。
はやぶさ2は地球から約3億キロメートル離れた小惑星「りゅうぐう」に着陸して、砂や小石などの試料を採取し、地球まで持ち帰りました。米国のアポロ計画などで過去に月の石は持ち帰られていますが、月よりも遠い天体から試料を持ち帰ったのは日本だけです。
「りゅうぐう」は地球から月までの距離の約800倍も遠く、到着させるだけでも日本からブラジルにある6センチメートルの的を狙うぐらい難しいといわれていました。着陸して地球まで戻ってきたのですから、日本の宇宙技術の高さを世界に示したといえます。
はやぶさ2が持ち帰った試料から、どのようなことが分かるのでしょうか。
太陽系が誕生して間もない頃の様子や、地球の生命の起源を探る手がかりになると期待されています。太陽系は約46億年前、宇宙を漂うガスやちりが集まって誕生したと考えられています。誕生間もない頃は「微惑星」と呼ばれる小さな天体がたくさんでき、それが集まって地球のような惑星や小惑星ができました。
地球のように大きな惑星は一度溶けて高温になるなどしたので、生まれた頃の物質がそのまま残っているわけではありません。しかし「りゅうぐう」のような小惑星は当初の物質がそのまま残っており、採取した試料を調べると、誕生時の太陽系がどのような物質でできていたのかなどを知ることができます。
また「りゅうぐう」は生命の源になる有機物を豊富に含むとみられます。試料に含まれる有機物を詳しく調べると生命がどのようにして生まれてきたかを知る手掛かりも得られると考えられています。
持ち帰った試料はたったの5グラムと聞きました。そんなに少なくて大丈夫ですか。
大丈夫です。計画では最低0・1グラムの試料を持ち帰ることを目標にしていました。その50倍以上の量を持ち帰ったので、予定していた以上の様々な研究に使われると期待されています。現在はどのような試料がどれぐらいあるか、といった基本的な仕分けをしているところで、本格的な分析は6月から始まります。
まず、はやぶさ2のプロジェクトに参加している研究者が、それぞれの専門分野で1年間分析する計画です。さらに試料のうち10%は米航空宇宙局(NASA)に提供し、12月から分析を始めます。
その代わりに、日本側はNASAの探査機が2023年に持ち帰る予定の別の小惑星「ベンヌ」の試料を受け取る予定です。2つの小惑星の試料を交換してそれぞれが調べることで、さらに研究が進むと期待されています。
22年6月からは国際公募した研究者による分析も始まります。また試料の40%はすぐ使わず保管し、将来の進歩した技術で分析する予定です。
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