これに対し、DESIの先行プロジェクトのひとつでニューメキシコ州南部の望遠鏡に設置された「スローン・デジタルスカイサーヴェイ」の場合は、測定ごとに望遠鏡の焦点にある円形のアルミ板に手作業で穴を開け、観測したい銀河の一つひとつに合わせて1本ずつ光ファイバーを差し込む必要があった。
望遠鏡の底部にはDESIの分光器があり、これがそれぞれの銀河の発する光を分解し、スペクトル(虹のような色の帯)が得られる。ここから銀河ごとの「赤方偏移」を測定すると、その銀河までの距離を算出できる(宇宙は膨張しているので、天体を発した光が地球から遠ざかって進むと、遠ざかるほど光の波長が長く伸びて赤く見える)。
目指すはダークエネルギーの実態解明
ガイのチームが現時点で手にしたデータからは、クモの巣のような複雑な銀河の構造が見えてくる。データには100億光年まで離れた銀河が含まれている。つまり、宇宙の年齢が現在の半分以下だったころに発した光をとらえていることになる。
晴れた夜空を見上げて天の川の全体像を捉えるには、個々の星をいくつか見つけるのではなく、一般的には空全体を見渡さなくてはわからない。DESIも同様に、壮大な規模の銀河の構造を明らかにするには、天空の広い範囲にわたって膨大な数の銀河を体系的に把握しなくてはならない。
「このプロジェクトには科学的に明確な目標があります。宇宙の加速膨張を高い精度で観測することです」と、ガイは説明する。
ここで出てくるのが「ダークエネルギー(ダークマター、暗黒物質)」だ。ダークエネルギーは謎に包まれているが、あらゆるところに存在し、宇宙の7割ほどを構成して宇宙の膨張を加速させていると考えられている。ガイのチームでは、このダークエネルギーの実体解明を目指す。
この観測はまた、宇宙物理学の分野で近年生じている問題の解決にもつながるかもしれない。地球に近い宇宙(つまり現在の年齢に近い新しい宇宙)で測定した膨張率と、初期の宇宙を測定した膨張率では答えが違ってくる、というものだ。この食い違いについてはまだ解明されていないが、DESIのデータからダークエネルギーの何らかの変化が示されれば、この謎も解ける可能性がある。
始まる銀河のカタログ化
DESIのデータは2023年に最初の公開が予定されている。膨大なデータが発表されれば、多くの科学者が無数の銀河の分析に着手すると同時に、新たな統計や機械学習ツールが開発されるだろう。
「それだけ膨大なデータに関して、人工知能(AI)やディープラーニングで何ができるのか非常に興味を引かれます。考えもしなかったような新しい何かが見つかる可能性もあります。そこがとても楽しみなところです」と、ニューヨークのフラットアイアン研究所の宇宙論研究者でスローン・デジタルスカイサーヴェイの研究者も務めたシャーリー・ホーは期待を寄せる。
これから数年で、DESIのほかにも包括的な宇宙地図のプロジェクトが始まる。例えば、米国立科学財団(NSF)の資金でチリ北部の乾燥した山地に建設が進められているヴェラ・C・ルービン天文台でも22年から大量の銀河のカタログ化が始まるが、こちらは精度は下がる。
からの記事と詳細 ( 史上最大規模の「宇宙の地図」が、ダークエネルギーの謎を解き明かす - WIRED.jp )
https://ift.tt/3TiZ6x0
壮大な
No comments:
Post a Comment