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Saturday, May 29, 2021

Netflix発の壮大なヒーロー叙事詩『ジュピターズ・レガシー』 配信アメコミドラマ全盛の今こそイッキ観! | ドラマ - BANGER!!!(バンガー!!!)映画評論・情報サイト

あのマーク・ミラーを会社ごと飲み込んで生み出した大作

Netflixオリジナル映画『ジュピターズ・レガシー』は、1930年代の大恐慌時代に最強ヒーロー“ユートピアン”と仲間たちがいかにしてパワーを手に入れたかというヒーロー誕生秘話と、現代になりヒーローたちが今まで掲げてきた「不殺」と「政治不干渉」の掟が限界に達し変化を強いられていくという、2つの時代を股にかけたスーパーヒーローの物語だ。

Netflixオリジナル映画『ジュピターズ・レガシー』独占配信中

本作は2013年からスタートした同名のコミックがベースとなっており、作者は『キック・アス』シリーズ(2010年~)や『ウォンテッド』(2008年)、『キングスマン』シリーズ(2014年~)などの映画原作コミックを手掛けたことで知られるイギリスの作家、マーク・ミラー。

ミラーは映画化されたオリジナル作品だけでなく、マーベルやDCコミックスでも活躍している。マーベル映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年)や『LOGAN/ローガン』(2017年)なども彼の作品がインスピレーションとなっており、コミックは全然読んだことがなくても名前は聞いたことがある、という人も少なくないはず。

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実は2017年に、彼の出版社である<ミラーワールド>がNetflixにまるごと買収されて大ニュースとなった。要するにNetflixは優れたアイデアを持つ作家との専属契約ではなく、コミック会社ごと買ったという形なのだが、Netflixがこのような買収を行うのは今回が初めて。そんな異例の買収から生まれた映像化の第一弾が、この『ジュピターズ・レガシー』というわけだ。

他にもミラーワールド作品は今のところ6本の映像化企画が動いており、マーベルやDCコミックスがそれぞれディズニーとワーナーで展開しているようなコミック原作の映像化作品群に対抗していきたいという、Netflixの意図が感じられる。マーベル/DCがそれぞれ自社系列の配信サービスでオリジナル作品を独占配信し人気を博しているだけに、Netflixとしても人気のスーパーヒーロージャンルをしっかり抑えておきたいということだろう。

そんな大きな期待を背負った『ジュピターズ・レガシー』は、実際どんな作品に仕上がったのだろうか?

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“ヒーローもの”がメジャーになった今だからこそ作れるドラマ

映像面で言えば、ほぼ映画級の予算で動いているであろうディズニープラスのMUC作品『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021年~)などと比べるとさすがに若干見劣りはするものの、Netflixがかなり力を入れていることが伝わってくる豪華な作りとなっている。アクション満載というわけではないが、超人的パワーの表現に面白いアイデアを使っているところは見どころだ。

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また、フランク・クワイトリーによって描かれたコミックの雰囲気をしっかり掴んでおり、コミックではストーリーに合わせてあえて古臭いデザインになっている旧世代のヒーローたちのコスチュームデザインも、映像化にあたって臆することなく鮮やかに再現している。キャストの顔立ちも絵に寄せてあり、こだわりを感じる配役が素晴らしい。

そして物語としては先ほど書いたように、100年近く活躍してきたヒーローチームが凶悪化する犯罪に徐々に対応できなくなり、二代目のヒーロー世代とも軋轢が生じ始めているという話なのだが、その主人公たちはスーパーマンやジャスティス・リーグなどに代表される有名ヒーローたちのオマージュとなっている。

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コミックではそういった有名ヒーローたちのオマージュ/パロディは頻繁に行われるが、映画/ドラマでもスーパーヒーローものが大ヒットしたことで、いちいち説明しなくても「要するにこいつはこの世界のスーパーマンで、こいつはバットマン、そんでフラッシュもいるのね」といった具合に、多くの視聴者が理解できるようになってきている。

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じっくり1シーズンかけて解説する贅沢な構成は好みが分かれる?

コミックのファンとしては、ヒーローの説明をすっ飛ばして展開するような作品が映像化しやすくなってきたことは感慨深い。それに関してはAmazon Primeオリジナルシリーズ『ザ・ボーイズ』(2019年~)や『インビンシブル ~無敵のヒーロー~』(2021年)などがやっているのだが、この『ジュピターズ・レガシー』は少し違ったアプローチをしている。

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それはヒーローたちが掲げる「不殺」の掟を、物語の中心に据えているところ。これはコミックにおける古典的ヒーロー像のオマージュであり、時代の変化をコミックにおけるヒーロー像の変遷と重ねて描くという、メタなストーリー展開でもあったりする。

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これは面白いテーマではあるものの、最近のコミック映画やドラマはそこまで「不殺」をヒーローとして当然の掟としては描いていないので、クラシックなヒーローっぽさを表現したそのメタなテーマは、あまり視聴者に伝わっていないんじゃないかという懸念も生じる。

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過去と現在が並行して進行していくという構成はDCコミックス原作のドラマ『ARROW/アロー』(2012~2020年)でもとられたが、正直なところ少々複雑で分かりづらいという印象。しかも「皆さんご存知の典型的ヒーローとそのチーム」という基本設定の説明は飛ばしてスタートしながらも、彼らがいかにしてパワーを得たか(過去編)がまるまる1シーズンかけてじっくり説明するので、せっかくの良さが薄れてしまって物語のテンポに影響しているのだ。

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それにもかかわらず、彼らがかつて現役ヒーローとしていかに活躍し、その掟がどれだけ重要だったかという細部はあまり描かれないので、コミックでの典型的ヒーロー像に馴染みがない視聴者には、その掟の重みも伝わりづらかったのではないかという心配もある。

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と、物語の構成自体には厳しい見方になってしまったが、1930年代が舞台の過去編は、謎の秘境を探検する冒険ものとしても成立していて楽しいし、時代の違いの描き方もよく出来ている。また、キャスティングとメイクの妙もあって若い頃と年老いた姿を上手い塩梅で描けていたりするところも大きな魅力の一つだ。繰り返しになってしまうが、せっかくなら40年代、50年代と時代の変化も見せてほしかったところだが……。

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本当に盛り上がるのはこれから! テーマの掘り下げにも期待

実は、今回のシーズン1ではコミック全5話のうち第1話と第2話の部分が描かれただけなので、きっとシーズンを重ねていくたびに面白くなっていくだろうと思っている。ネタバレになってしまうので詳しくは書かないが、コミックは第3話から怒涛の展開となるので(正直そこを含めてシーズン1としたほうがもっとインパクトがあったんじゃないかと思うが)、楽しみにしておきたい。

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加えてコミックでは、ユートピアンの息子と娘は両方とも親に対して反抗的だが、ドラマ版の息子は「最強の父の後継ぎになろうと奮闘するも、父の期待に答えられないことに葛藤している」という設定に変更。それがシーズン1では効果的に機能していたので、次シーズン以降の注目点となっていくだろう。もちろんタイトル通り「レガシー=遺産」も大きなテーマなので、きっと掘り下げられていくはず。

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ミラーワールド映像化の第一作としてNetflixの意気込みは窺えるものの、詰め込みすぎな構成と複雑さでテンポに支障が出ている印象が否めない。それでも今後どんどん面白くなっていくポテンシャルを秘めた作品なので、ミラーワールドを含め今後の展開に大いに期待したいところだ。

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文:傭兵ペンギン

『ジュピターズ・レガシー』はNetflixで独占配信中

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