<元米国防総省中国部長が新著で解き明かすのは、世界規模の野望を持ちながら、弱さも秘めた現代中国の姿だ。アメリカと同盟国は、その矛盾を理解せよ>
ソ連崩壊から約30年が過ぎた今、アメリカの覇権争いの相手は中国だ。習近平(シー・チンピン)政権の発足以来、中国はより強く自己主張する路線を推し進め、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)でアメリカとの競争は激化した。
表面的に見れば、中国は自信に満ちている。経済は回復基調にあり、軍の現代化やテクノロジー開発の加速、外交的影響力の拡大が進む。
その中国をより詳しく分析し、能力と戦略目標を検証した、アメリカン・エンタープライズ研究所アジア部門責任者ダン・ブルーメンソルの新著『中国の悪夢──衰退する国の壮大な野望』は、タイムリーで洞察に満ちている。
本書が光を当てるのは、現代中国の矛盾だ。中国は積極的で野心的な大国であり、同時に弱さを秘めている。その弱さが中国の台頭をなきものにする、あるいは衰退を早めることになりかねない。
ブルーメンソルが中国研究を始めたのはかなり前、米国防総省中国部に勤めていた時代のことだ。以来、中国に起きた数々の変化について、本書は理解を深めてくれる。
中国が求めるのは地域的覇権か、グローバルシステムの支配か。専門家の見方は割れるが、本書が出す答えは明快。中国の野望は世界規模だ。
その根拠として挙げるのが、2017年に開催された中国共産党第19回全国代表大会で習が行った報告。中国は今世紀半ばまでに「世界有数の軍事力を擁する豊かな社会主義現代化強国」になると、習は宣言している。
「中国は自国の影響力を中心とし、自国のルールに基づく新たな世界秩序を率いることを望んでいる」ため「地政学的支配を求める闘いはアジアにとどまらない」と、ブルーメンソルは記す。
だが世界を視野に入れる中国の野望の裏には、弱さが隠れている。中国共産党自身が「国内外での安全保障環境は実際のところ、圧倒的なまでに困難だと評価している」と、本書は指摘する。
恐怖の帝国を生み出す
中国政府は経済・社会・政治的課題の数々に直面している。例えば、急ピッチで進む高齢化、経済への国家統制の再強化を原因とするGDP成長率の鈍化、農産物生産や国民の健康を阻む環境問題の悪化、イノベーション創出の停滞で「中所得国の罠」に陥るという将来像、分離主義や国内不安の懸念だ。
からの記事と詳細 ( 「危険で脆弱な超大国」独裁国家・中国のトリセツ - Newsweekjapan )
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壮大な
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