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NTTが29日、株式公開買い付け(TOB)を通じたNTTドコモの完全子会社化について同日に取締役会を開催すると発表したこと受けて、東京市場ではドコモ株に買いが集中している。菅義偉首相が目指す携帯電話料金の引き下げに、NTTがいち早く応えるとの期待が高まっている。
ドコモ株は11時30分現在、値幅制限いっぱいの3213円でストップ高買い気配。完全子会社化については、日本経済新聞が28日に電子版で報じていた。ブルームバーグのデータによると、NTTは現在ドコモ株の66.21%を保有。残りの約34%を28日のドコモの株価終値2775円に30%のプレミアムを上乗せした金額で取得すると、買収規模は約4兆円。
備考: NTT、ドコモの完全子会社化についてきょう取締役会を開催
菅首相は諸外国の例を参考に、官房長官時代から携帯電話料金引き下げの早期実現を目指しており、18日には武田良太総務相に指示していた。加藤勝信官房長官はNTTによるドコモの子会社化について問われ、料金引き下げについて「積極的に検討することを期待したい」と29日の記者会見で話した。
「菅政権の通信料金引き下げ政策に対して日本を代表する企業が予想以上にスピーディーに動いてきたとの印象」と話すのは大和証券投資情報部の石黒英之シニアストラテジスト。海外投資家からは日本の業界再編が進むとの期待感につながるため日本株全体にとってプラスと評価した。
シティグループ証券のアナリスト鶴尾充伸氏は英文メモで、ドコモの株価はこれまで携帯料金引き下げによる収益圧迫を嫌気して調整していたが、TOBへの期待がポジティブに働き上昇していると説明。フェアバリューは3200円で、30%のプレミアムが付与されれば、4160円程度でTOBが成立するとみている。
スマートカーマのアナリストを務めるトラビス・ランディー氏は英文リポートで、NTTはすでにドコモ株の66%以上を保有していることを考慮するとドコモの子会社化のためにプレミアムを追加する必要はないとみる。ドコモは同業他社に比べてすでにプレミアムで取引されており、菅首相による携帯料金引き下げ政策のショックは、プレミアムを多く払わないための良い口実のようだと述べた。
一方、NTT株は一時5.8%安の2162円と下げる局面もあったが、その後2225円に下げ渋った。配当権利落ちを考慮した基準値が2246円であることを考慮すると、市場の反応は必ずしもネガティブとは言えなさそう。シティ証券の鶴尾氏は、子会社化はNTT財務への負担が大きいと指摘。株主還元が抑制される可能性が高いが、長期的にはこれまでグループ外に流れていた利益の取り込み、コスト削減の加速、収益性改善の余地の拡大などが考えられるとポジティブな見方も示した。
ドコモ以外の通信大手株も下げている。ジェフリーズ証券のアナリスト、アツール・ゴヤール氏は英文リポートで、NTT株の3割近くを政府が保有していることから、完全子会社後に政府が値下げを指示すればNTTはそれに従うとみている。そうなれば、ほかの通信大手も値下げに追随するのは時間の問題だろうという。
携帯各社の中で下げが目立つのは楽天株。ゴヤール氏は、全ての携帯電話会社が値下げすると、「楽天のポジショニングと戦略にあらゆる疑問が生じる」との見方を示した。KDDI株と、ソフトバンク株は、配当権利落ちを考慮した基準値と比較して軟調に推移している。
(株価や携帯料金引き下げの背景を追加して更新します)
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