JAC整備士作「空の上の航空教室」が基準を説明
空港の出発ロビーにて、「到着地が悪天候のため、場合によっては引き返す場合などがありますのでご了承ください」といったアナウンスを耳にすることがあります。
【マンガ】高校受験へ向かう少女の乗った飛行機は悪天候下に無事着陸できるのか…?
そのアナウンスの対象が搭乗予定の便であった場合、果たして目的地に到着できるのか否か分からない状態で乗り込むわけですが、実際に目的地の空港へ着陸できるかどうかは、いつ、どのように決められるのでしょうか。
JAL(日本航空)グループで、鹿児島を拠点に離島と本島を結ぶような地域路線をおもに運航するJAC(日本エアコミューター)は、同社の機内誌「JAC NOW~ゆいタイム~」内の、現役のJAC整備士が手掛ける漫画『空の上の航空教室』にて、この着陸可否の判断基準を説明しています。
同漫画では、島根県の離島、隠岐諸島にある隠岐空港における事例を紹介しています。
それによると、JACがかつて保有していたボンバルディアDHC8-Q400型機で着陸する場合、MAP(Missd Approach Point)という航路上の位置において、滑走路がパイロットから見えるかどうかで着陸の可否を決めていたそうです。見えない場合は着陸復航(ゴーアラウンド)、つまり着陸をやり直すために再び高度を上げることになり、そのまま天候の回復が見込めない場合は出発空港へ引き返すことになります。
なお、この基準は着陸先の空港や、使用する飛行機などによってそれぞれ定められており、パイロットはそれを理解し、遵守したうえで的確な判断を下しているといいます。
では、実際どういった時期に、このような事象が多く発生するのでしょうか。現役のJAC ATR型機機長、木村亮典さんに話を聞きました。
現役のJACパイロットに「悪天候」について聞いてみた
――飛行に影響を与えるような「悪天候」は、どのような時期に多いのでしょうか。
日本には四季があり、それぞれ天気にも特徴がありますが、季節の移り変わりに現れる前線(暖かい空気と冷たい空気の境目)の中での運航は、見通せる距離が短くなることがあるほか、突然風向きや風速が変わることも考えられます。風の影響は飛行機には大きく、強風時は気流の変化が進入角度やスピードに影響し、安定した進入が維持できず、場合によっては安全のために着陸復航を強いられることもあります。
ちなみにJACのホームである鹿児島空港は、活火山である桜島や霧島連山が近く、その近さは世界中でもとても珍しいものです。このことから、火山灰による飛行への影響を避けるため、鹿児島空港を離着陸するときは、常に最新の火山灰や風の情報を入手し、必要に応じて飛行経路を変更するなど、特有の対応を行うこともあります。
――JACが現在就航している空港のなかで、いわゆる「難所」ともいえるのは、どの空港なのでしょうか。
便数が比較的多いので意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、屋久島空港での運航には特に気を使います。ここには九州で最も高い標高1936mの宮之浦岳があり、この地形的影響で、屋久島で進入や着陸を行う際は気流が乱れていることが多く、ほかの空港以上に着陸するまで自然と気を張っていると感じます。
※ ※ ※
なお、先述の漫画『空の上の航空教室』で、JACのホームである鹿児島空港ではなく、隠岐空港を例に解説していたのは、利用者からJACへ届いた手紙をもとにしたエピソードだからです。
手紙には、高校受験のため隠岐へ向かう女の子とその父親の乗る便が、大荒れの天候下、一度は着陸復航しつつも隠岐空港へ着陸、女の子は無事受験でき、これに合格した旨が綴られ、機長への感謝の言葉が述べられています。
乗りものニュース編集部
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