写真はイメージ=PIXTA
投資業界のカリスマの一人、澤上篤人氏が考える長期投資のあるべき姿を、同社最高投資責任者の草刈貴弘氏との対談形式で紹介する。
■ディーリング相場の終焉(しゅうえん)
澤上篤人(以下、澤上) 2月下旬から世界の株価は記録的な棒下げを繰り返している。このコラムで折に触れて話してきた株価の調整がようやく始まったようだ。今、崩壊しつつあるバブルの仕組みとこれからの見通しに焦点を当ててみよう。
この10年ほどの世界の株式市場を振り返ると、壮大な「ディーリング相場」が繰り広げられてきたと言える。リーマン・ショックで混乱に陥った世界経済を下支えすべく、各国政府や中央銀行は史上空前の金融緩和に狂奔してきた。政策金利もゼロ同然にまで引き下げられた。
草刈貴弘(以下、草刈) 流れを少し補足させてください。1999年に日本は不景気脱却のためゼロ金利を導入し、2001年には量的緩和政策も採用します。その出口を模索しようとしていた矢先、リーマン・ショックに襲われました。米国はなりふり構わずマネーを市場に供給し始め、欧州でも欧州中央銀行(ECB)が、これに続けとばかり緩和へまい進します。結局、日本もだらだらと緩和を続ける他に手がありませんでした。
そこに"バズーカ砲"を携えて登場したのが今の黒田東彦日銀総裁です。黒田総裁が打ち出した常識をはるかに超える異次元の緩和策に市場は仰天します。
澤上 そうして日米欧の中央銀行はバランスシートを4~5倍に膨らませるほど大量の資金を供給してきたが、経済成長率は高まらず、物価も上がってこなかった。
草刈 「日本化」という不名誉な呼ばれ方をしていますが、いくら金利を下げてマネーを供給しても需要が高まらない。賃金も上がらなければ物価も上がらない。消費が活発化しないというスパイラルに陥ってしまったわけですね。
澤上篤人氏(写真:竹井俊晴)
澤上 一方、株式や不動産はすさまじいバブルとなっていった。ただ同然の低コスト資金がこれでもかと供給されるから、株や不動産は未曽有の買い手市場となり、どんどん上値を追っていった。
とりわけ株式市場はディーリング売買のるつぼと化した。大量の資金を背景にした年金をはじめとする世界中の機関投資家が、短期の成績に目の色を変えた。新規資金が次から次へと流入してくるという地合いの良さも手伝い、株価はどんどん上がっていった。
草刈 株式市場よりもバブル化していたのは債券市場ですよね。政策金利はゼロどころかマイナス。しかも発行したそばから中央銀行が買ってくれる。もはや財政ファイナンス(財政赤字の穴埋め)をやっているようなものです。
優良国債の金利が下がってしまうと、市場にあふれるマネーはより高い金利を求めてリスクの高い債券を買いに行く。買われるから金利が下がり、またより金利の高い商品を探すという繰り返し。破綻可能性の高い企業の社債や、ついこの間デフォルト(債務不履行)した国の100年債まで買われる始末。結果は目に見えているはずなんだけどな、と思うのですがね。
澤上 それを見て我々は「カネばらまきによる張りぼての世界景気であり株高だ。いつか崩れるぞ」とずっと警告してきた。その引き金となったのが、新型コロナウイルスのまん延と原油価格の急落である。
草刈 世間的には新型コロナの話が大きいですね。これまでの疫病とは比べものにならないほどの悪影響を実体経済に与えています。人が活動できなくなれば消費が低迷し、モノの移動も減ると経済はどんどん縮小する。これから数字でもはっきりするでしょうが、相当ひどい状況になると思います。
一方、原油価格の急落も深刻な問題に発展する可能性があります。政治的に折り合いがつかなくなり、産油国がライバルとして争えば、どこかが敗者となる。それによって周辺国に政情不安が伝播すれば、世界経済の減速に加えて地政学的リスクも高まるでしょう。1980年代後半の原油価格下落がソ連の崩壊を早めたといわれますが、現在の不安定な中東で同じことが起これば、アラブの春程度では済まないかもしれません。
■株売りだけでは終わらないよ
澤上 恐らくだが、今回の調整は金融マーケットの大混乱は無論のこと、世界経済を震撼させるところまで行ってしまうだろう。一時的な株価の反発はあろうが、壮大な金融バブルは総崩れに向かって駒を進めたとみて間違いない。
その読みの最大の根拠は、各国が進めてきた金融政策に限界が見えてきたことだ。もはや金融緩和の深掘りはできないとマーケットは見透かしている。
金融緩和では効果がないとなれば、マーケットは財政出動など別の刺激策を求めだす。それでも駄目だとなったら、市場は売り一色という展開になるだろう。バブルが弾ける時はいつも同じだよ。
草刈 本当にそうですね。これまでなら米連邦準備理事会(FRB)が何か事を起こせば、市場はプラスの反応をしてきましたが、今回は全くの逆になっています。政策についても反応は薄く、日中の株価変動も大きいままです。前場、反発して始まったと思っても、後場には急落していたり、再び戻してみたり。本当に不安定です。
米国では空前の高騰を謳歌してきた現代アート作品が、換金を急ぐオーナーたちに投げ売りされているとか。まさにマネーの逆流といった動きが出始めているそうです。今回の調整は、通常の調整では終わらない雰囲気ですね。
澤上 その前に、企業の破産が続出しよう。何しろ、ゼロコストの資金をいくらでも借りられたから、野放図な事業拡大に走ってきた会社がいくらでもある。あるいは、ゼロコストで借り入れた巨額の資金を自社株買いに注ぎ込んできた。
バブル資産の値崩れや株価暴落で巨額の評価損を抱えた企業は、債務超過に追い込まれるだろう。となると、資金を融通してきた金融機関は不良債権の山を抱え込むことになる。
草刈 金融機関を通じて、金融システムにまで飛び火したらそれこそ大混乱になりますね。そうなってくると本質的な価値とは何か、何に対価を払うべきなのか、ということが問われてくる気がします。
もちろん全てのモノ・コトの価値がゼロになるとは思えません。ただ、公正・妥当な価値を見つける「価格発見機能」を市場が失い始めているのは確かでしょう。本質的な価値を持つところへとお金を移しておかないとまずい状況になりかねないですね。
澤上 まさに、長期投資家が常日頃からよって立っているところへ、投資の舞台が移ってくるというわけだな。
草刈貴弘氏(左、写真:竹井俊晴)
澤上篤人
1973年ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。ピクテ・ジャパン代表取締務めた後、96年あえてサラリーマン世帯を顧客対象とする、さわかみ投資顧問(現さわかみ投信)を設立
草刈貴弘
2008年入社。ファンドマネジャーを経て13年から最高投資責任者(CIO)
[日経マネー2020年6月号の記事を再構成]
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株価の本格的な調整が始まった(澤上篤人) - 日本経済新聞
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