産業技術総合研究所は2020年2月12日、人工組織の構築を目的としたマイクロマシンを開発したと発表した。磁力を利用して、細胞を目的地まで供給する。細胞には特定の処理を施す必要はなく、細胞に障害も与えない。マイクロマシンの大きさや形は変化でき、希望の数と大きさで細胞を供給する。構築した人工細胞に、後から細胞を追加することも可能だ。
今回開発したマイクロマシンは、本体部分に細胞に無害な血清アルブミンを用い、磁力で遠隔操作できるように磁性ナノ粒子も加えた。また、マイクロマシンは輸送する細胞の補足と脱離が必要なため、疎水性相互作用で細胞膜に弱く結合する細胞補足パーツを表面に結合させた。
磁石を用いて細胞のある場所に誘導されたマイクロマシンは、細胞と接触することで細胞を補足する。補足した細胞を目的地まで輸送した後に、細胞を目的地表面に一晩密着させると、細胞は接着し、その場に留まる。複雑な形状の表面や培養容器内の微小な面など、さまざまな場所への細胞の供給が可能だ。
人工組織の構築には複数種の細胞の配置が必要なため、研究グループは異なる細胞種からなる2次元、3次元の細胞組織構造体も作製し、マイクロマシンの有用性を確かめた。複数種の細胞を段階的に配置することで、複雑な組織の作製が可能となる。
iPS細胞などを用いて生体組織の配置を模倣した人工組織を構築する研究が活発化している。しかし、従来の手法では凸凹のある複雑な形状の表面や閉ざされた空間の内部での組織の構築はできなかった。
今後、研究グループは今回開発したマイクロマシンを用いて、より生体組織に類似した人工組織の開発をするとともに、炎症性腸疾患の細胞治療への応用を視野に入れている。
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