多くの視聴者が予想していた通り、電ノコ男の正体はやはり病院長・榎木田(鹿賀丈史)だった『赤いナースコール』(テレビ東京系)最終話。
動機は2年前に町田のコンビニで起きた殺人事件。やはり、店内でタバコを吸っている人に注意をしたところ逆ギレされ殺されたのが榎木田と元妻・西垣(浅田美代子)の息子・三上誠一(大門崇)だった。そしてその現場に居合わせたのに止めることも通報することもしなかった者や、この事件と間接的に関わった者がここ榎木田記念病院の313号室に集められたのだった。
誠一が殺害されたのと同じく電ノコで、息子を見殺しにした者たちを、そして死後彼のことを面白おかしく取り上げ騒いだ週刊誌やドラマ作品に関わり二次被害をもたらした者たちを、榎木田は自分なりの正義の下で成敗していったのだ。幸か不幸か同じ病院内に"チャイコフスキー犯"である医師の石原(板尾創路)やその協力者がいたことでそれぞれの事件が意図せずシンクロし不気味さを増幅させ、時に捜査を錯乱させながら。
では、313号室ではなく1人だけ別室で入院していたアリサ(福本莉子)の正体は・・・。誠一とアリサが恋人同士だった可能性を前話で考察したが、アリサの姉・藤森渚(岬あかり)が誠一の恋人だった。榎木田が何とも言えない表情で見つめていた写真に写っていたのは、誠一とその恋人・渚、そして榎木田とその妻・玲子(渡辺真起子)だった。
アリサもあの事件をきっかけに一家離散に追いやられていた被害者だったのだ。姉の渚は犯人を轢き殺した際に自身も即死、父親は大学で責任を問われ自殺、母親は重度の精神障害をきたして現在も医療施設に入院中だと言う。そんなアリサに榎木田は自身の復讐計画を持ちかけ、病院に縁のない人――つまり翔太朗(佐藤勝利)を担ぎ込ませるように仕向けた。
しかし、計算外だったのは復讐するために翔太朗に近づいたアリサが本当に彼のことを好きになってしまったこと。そのことに気づいていた榎木田は、翔太朗と距離を取らせるためにアリサだけを別室に入院にさせたのだった。
翔太朗と近づけば近づくほど、姉の復讐を遂げるという目的遂行もどんどん叶えられるわけだが、きっとどこかで"その日"が来ないで欲しいと願ってしまう自分がいることにも気がついていたことだろう。もしアリサが復讐と関係なく翔太朗と出会えていたら・・・そんな世界線があれば良かったのにと願わずにはいられない。アリサも話していた通り「過去なんか振り返らないで、翔ちゃんとの未来を見ればよかった」。
第1話、両親との挨拶に向かう(という大義名分で翔太朗をおびき寄せたドライブ)車中、アリサが話していた「私は翔ちゃんと一生一緒にいたい。私が死ぬまで」「私が翔ちゃんに看取られて死ぬの」はきっと本心だったのだろう。あの時から、アリサの中では相当な迷いがあり、最後は翔太朗の身代わりになって死ぬこともどこかで頭に過っていたのではないだろうか。アリサ視点からこの物語を眼差すと、物語はまた全く異なる様相を呈し、胸を切り裂かれそうな切なさが募る。
復讐に躍起になる余り多くの人間を手にかけてしまった榎木田と、そんな彼に巻き込まれ間接的にではあるが大切な人を失った翔太朗。対照的な2人が鉢合わせするラストシーンは後味が悪く、示唆的だ。翔太朗の腕に抱かれた自死したアリサの姿に、自身が描いた壮大な復讐計画の不毛さと、それがため奪い去られた本来関係のない人の未来に榎木田が思い至ることを祈る他ない。結局自分が誠一を殺めた残忍な犯罪者と何ら変わらないことを正面から突きつけられた時、榎木田の目に自分のそのおぞましい姿はどう映るのだろうか。
文:佳香(かこ)
◆番組概要
ドラマプレミア23『赤いナースコール』
動画配信サービス「Paravi」にて全話配信中
(C)「赤いナースコール」製作委員会
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