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Saturday, March 26, 2022

【NY発コラム】在日韓国人家族の歴史を壮大なスケールで描いた「Pachinko パチンコ」 監督&キャストが明かす秘話 - 映画.com

2022年3月26日 15:30

Apple TV+で全世界配信中
Apple TV+で全世界配信中

ニューヨークで注目されている映画・ドラマとは? 現地在住のライター・細木信宏が、スタッフやキャストのインタビュー、イベント取材を通じて、日本未公開作品や良質な独立系映画を紹介していきます。


今回取り上げるのは、優秀なアジア人チームが結集したApple TV+の新ドラマ「Pachinko パチンコ」だ。

ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーとなった作家ミン・ジン・リー氏の同名小説を原作としており、「ミナリ」でアカデミー賞最優秀助演女優賞を射止めたユン・ヨジョン、「花より男子 Boys Over Flowers」のイ・ミンホらが出演。「ブルー・バイユー」のジャスティン・チョンと、「コロンバス」のコゴナダが共同監督を務めている。

本作は、韓国語、日本語、英語の3カ国語で進行する国際的なドラマだ。韓国人一家の4世代にわたる物語を、80年間に渡って、壮大なスケールで描き出している。全8話構成となっており、Apple TV+にて、3月25日から日本を含む全世界で配信がスタートする(3月25日に第1~3話を一挙配信。その後、4月29日まで毎週金曜日に新エピソードを配信していく)。

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主人公は、日本の侵略によって植民地支配下にあった韓国・釜山で生まれたソンジャ(キム・ミンハ)。彼女の人生を軸に、3つの時代を交錯させながら、ストーリーは紡がれていく。

1つ目は、1910~31年の韓国・釜山。ソンジャが街を牛耳るコン・スーと恋に落ちていく様子が描かれる。2つ目の時代は、1931年。ソンジャが豊かな暮らしを求めて、日本に移住する様子が映し出される。最後は、1989年からの出来事。ソンジャの孫・ソロモンが、ビジネスマンとして日本で働く姿を活写。壮大な歴史的背景を通じて、家族愛をとらえた意欲作だ。

同ドラマから、ジャスティン・チョン監督、1989年からの日本パートの主人公・ソロモンを演じたハ・ジン、ソロモンが一目置く会社の同僚ナオミ役のアンナ・サワイが単独インタビューに応じてくれた。彼らの言葉を通じて「Pachinko パチンコ」の魅力をお届けしよう。

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ハ・ジンには、まず原作の魅力について尋ねてみた。「原作は英語で書かれていて、初めて在日韓国人について読んだ作品でした」という。

ハ・ジン「Apple、制作会社Media Resといったアメリカの企業が、その原作を脚色してシリーズ化する。この新鮮なプロジェクトへ参加できることに興奮しましたし、題材に対して、出来る限り真実味のあるアプローチをしようと思いました。このプロジェクトは『アメリカ人を意識し、その市場に合わせる作品』『アメリカ人として描く作品』とは対照的です。僕ら俳優陣と製作者のスー・ヒューは、多くの作業をこなし、この番組での世界観と歴史を作ることができたと思っています」

一方、ジャスティン・チョン監督は「原作はとても感動的で美しい。(アジアの)コミュニティにとって重要な文学作品だと思います」と説明する。

ジャスティン・チョン「(アメリカの)メインストリームの物語としては聞いたことがない作品になると思います。重要でインパクトのある作品になると感じているんです。僕はいつも自分の仕事が『単なる娯楽のためのもの』なのか、『社会的に(何かに)言及しているもの』なのかを見極めています。今作は社会的に何かに言及しているもの。この物語の中で多くの枝分かれした道を探求することで、(視聴者は)オープンな会話ができると思います」

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話題は、キャスティングの秘話に転じる。物語の軸を担う若き日のソンジャを演じたキム・ミンハは、どのような経緯で起用されたのだろうか。

ジャスティン・チョン「ミンハが、この役のために生まれてきたことは明白でした。(制作のために)才能のある多くの女優たちを、ソンジャという役のために見てきました。しかし、ミンハが送ってきたビデオテープは、目を見張るものがあったんです。多くの監督がよく語ることですが、芝居の技量、外見以上に、このプロジェクトに最適、つまり『IT(それだ!)』だと思える特別な要素が映し出されていました。彼女には画面から醸し出される生真面目さ、自然体でいる知恵が見受けられたんです。だからこそ、ミンハがソンジャ役に最適だと思いました」

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では、ソロモン役のハ・ジン、晩年のソンジャを演じたユン・ヨジョンはどうだっただろうか。

ジャスティン・チョン「ハ・ジンは、彼がこの業界に入ってからずっと見てきた俳優です。TVシリーズ『Love Life』『Devs(原題)』や、ミュージカル『ハミルトン』……どのプロジェクトでも才能があるように見えましたし、常に彼を尊敬してきました。ユン・ヨジュンは韓国ドラマではベテランです。そんな彼女がソンジャの晩年を演じることで、何をもたらしてくれるのかと興奮していました」

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アンナ・サワイはナオミという役どころについて「英国の銀行シフリーズで働くマネージャーで、非常に知的な女性です」と説明しつつ、「当時(=1989年)は、日本に男女雇用機会均等法が制定されたばかりの頃。会社も変化しつつある状況でしたが、それでも社内の人々は、必ずしも女性を歓迎してはいなかった時期でもありました」と語る。

アンナ・サワイ「そのためナオミは、社内では男性ほど尊重された扱いを受けない。何年も同じ会社にいた彼女よりも、(アメリカから戻ってきた)アウトサイダーの同僚・ソロモンが受け入れられているという事態に、初めは苛立ちを感じているんです。私自身はそんな話が興味深かったんです。そこで当時のナオミと同世代だった私の母親に話を聞き出してみると、(日本の会社で)同様の体験をしていました。それを知ってショックを受けました」

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ハ・ジンは、ソンジャの孫であるソロモン役を通じて、このような考えを抱いたようだ。

ハ・ジン「ソンジャが日本に来たばかりの頃(=1930年代)と、ソロモンが過ごす1989年代を比較した際に、この番組の焦点の一つがわかります。それは世代を超えて、時間の経過と共に変化が起こる可能性を示すことです。視聴者は、まず1989年のソロモンを最初に知ることになります。(その時点で)彼は既に長い人生を過ごしてきている。エピソードが進むにつれ、観客は色々なことを発見していくことになります。つまり、ソロモンが日本に帰国した瞬間は、人生の新たな章に過ぎないんです。彼には変化が訪れていますが、まだ彼自身はそれに気付いていません」

ハ・ジンは韓国系アメリカ人。日本語を話すために訓練を受けたそうで「今作が始動してから、ユミ・カンさんという在日韓国人の方に言語指導を受けました。彼女と共に、常に練習し、勉強したことで、流暢に日本語が話せるようになりました」と明かしてくれた。

ジャスティン・チョン監督とコゴナダ監督は、それぞれエピソードを分けて4話ずつ撮影を行っている。俳優陣には、時代設定で分けられたものではなく、全ての時代設定を包括した脚本がまとめて送られてきたそうだ。

「あるシーンでは、時代が交錯する箇所がありますが、撮影現場ではそれぞれの時代をまとめて撮っていたり、スケールの大きなシーンであれば、時代の設定に関係なく、キャストが一堂に会する形で撮影を行っていました。つまり、1920~30年代のキャスト陣と、1989年代のキャスト陣が一緒になって、2つの映画を同時に製作しているような感覚でした。2人の監督が並行して、別々のエピソードを撮影していました。そのため、私たちはコゴナダ監督が指揮するシーンを撮影し終えると、同日に、ジャスティンが指揮するエピソードに出演するため、そのまま別のセットに移動するということもありました。だからこそ、現場は信じられないほど、複雑に組織化されていて、撮影は6カ月で完了しました」

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ハ・ジンが語ったように、劇中では過去の思いが別の時代へと繋がっている場合があり、その仕掛けが相乗効果を生んでいる。

「日本が韓国を植民地化した」という歴史が、若い世代に忘れ去られているという現実がある。そんな状況の中で、母国の歴史を振り返ることが、どのように重要になってくるのか――。ニュージーランドで生まれ、10歳の頃に日本へと戻ってきたアンナ・サワイは、このように答えた。

アンナ・サワイ「日本の学校ではあまり教えられていないことがあり、考えさせられることが多いです。でも、同じ過ちを繰り返さないために、過去から学ぶという姿勢は重要です。一部の政治家が明らかに間違ったことをしていることを、今でも我々は見ていますし、彼らは過去(の悲劇)を繰り返すでしょう。ですから『何が起こったのか』を知るということは重要だと思っています。だからこそ、今作は視聴者がどこの出身であろうとも、全ての人に語りかけてくるような作品になっていると思います」

本作の根底には「母親の愛」というテーマがあるように思える。ジャスティン・チョン監督は、この愛を描くうえで、どのような点に気を払ったのだろうか。

ジャスティン・チョン「まずは、脚本自体が素晴らしかったんです。そこから、僕がプロジェクトに持ち込んだのは『対話のない瞬間』というものを、いかにとらえるかということでした。そこで、ソンジャの母親が(植民地化の影響で、簡単に食べることができない)白飯を買い、その白飯を手ですくうというシーンを撮影しました。そして、ソンジャとイサク(ソンジャの夫となる男性)が結婚した夜、母が白飯を持っていき、ドアの前で屈んでお膳を運び入れるというシーンがあるのですが、あれは脚本に書かれていない場面なんです。パワフルな演出になると思って取り入れています。母親が娘を送り出している――この事に気づくまでに、おそらく少し時間がかかることになると思います。ソンジャが娘として過ごす最後の夜であり、その後、彼女は妻になるため変わっていきます。やがて、ソンジャ自身も母親となる。そんな彼女が、息子をどのように扱うか。この流れを詳細に撮影することに集中していきました」

4世代にわたって紡がれる80年間の物語。母親の愛、世代ごとに歴史を引き継ぐという意味合いが強調されている「Pachinko パチンコ」。ジャスティン・チョン監督は、視聴者に何を感じ取ってほしいと思っているのだろうか。

ジャスティン・チョン「僕はただ人々に共感してもらいたいと思っていいます。さらに言えば、この特定の物語と、物語の中にいる全ての人々に対して、感情的に感動し、何かを感じ取ってもらいたいんです。素晴らしい物語がたくさん含まれていると思います。この物語を通して、自分の物語も見つめてほしいと思っています。それが、美しいことになると思うからです」

(映画.com速報)

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