富士を背に箱根火山が峰を連ねる神奈川県箱根町。外輪山に囲まれた直径8〜11キロのカルデラ内に、駒ケ岳などの中央火口丘や芦ノ湖を抱く。
大地から湧き上がる熱と力は多様な景観を生み、人々に情熱も吹き込む。明治時代、住民が開削した車道は古くからの「箱根七湯」を結ぶ国道1号となり、天下の険に箱根登山鉄道を敷く壮大な夢も大正時代に実現、富裕層の観光地を庶民に開く。小涌谷や大平台なども温泉掘削や造成に成功した。
カルデラ北西部の仙石原の大半はかつて原野だった。財界の重鎮、渋沢栄一や旧三井物産創業者の益田孝らは昭和初期「箱根温泉供給」を設立。同社は火口域の大涌谷から出る有毒な噴気を水に混ぜて温泉に変え、仙石原と強羅に送湯網を巡らす。明治まで「大地獄」と呼ばれた大涌谷は、湧泉の乏しい地域を潤す希望の源泉となった。
源頼朝が「開墾すれば千石の米がとれる」と言った伝承が仙石原の由来という。町立郷土資料館の鈴木康弘館長(62)は「真偽はおいて、伝承は地元民の真情を伝える」と話す。逆境を理想郷に変える熱情は、箱根に不屈の歴史をつづり続けていく。 (西岡聖雄)
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