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Monday, July 5, 2021

『鉄拳』シリーズは親子ゲンカの歴史! 三島一族のお家騒動を軸とした物語の魅力 - Red Bull

『鉄拳』は、長年人気を博している対戦格闘ゲームだ。1994年12月にアーケード版の初代『鉄拳』(以下、『鉄拳1』)が登場し、2015年には最新作となる『鉄拳7』がリリースされている。

そんな『鉄拳』シリーズの魅力のひとつといえば、三島(みしま)家を巡る壮大な一族争いの物語だ。

とくに、三島家の当主を務める三島平八(みしま へいはち)と、その息子・三島一八(みしま かずや)が繰り広げる、血で血を洗うような親子の確執がストーリーのキーポイントとなっている。

平八と一八の争いは、単なる親子ゲンカから、シリーズを重ねるごとに世界を巻き込む壮大な戦争へと発展していく。そんな豪快かつ面白い親子ゲンカの経緯を、各タイトルのストーリーをおさらいしながら解説していく。

(※なお一部、ストーリーのネタバレも含まれておりますので、ご注意ください)

『鉄拳7』のゲーム画面。写真左が父・三島平八、右が息子・三島一八。

© TEKKEN​™7 & ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

01

◆『鉄拳1』:復讐を決意した息子

『鉄拳1』
アーケード版: 1994年12月稼働開始
プレイステーション版: 1995年3月31日発売

『鉄拳』シリーズは、軍事産業を担う三島財閥の当主・三島平八と、その息子・三島一八の親子を中心とした物語が展開される。

息子・一八は、幼少期から三島流喧嘩空手および帝王学を父・平八より叩き込まれていたが、一八が5歳の時、平八に修行の一環として崖から突き落とされ胸に傷を負ってしまう。

そのようなことからも一八は、じょじょに父に憎悪の念を抱くようになり、ついに復讐を決意する。

そして月日は流れ、平八は三島財閥を強化しようとする目論見のもと、格闘技大会"The king of iron fist tournament(ザ・キング・オブ・アイアンフィスト・トーナメント)"を開催する。

当主の座と全財産を優勝賞品として掲げることで、世界中の有力な格闘家を集め、財閥の軍事力を高めようとしていた。

そんななか、平八を当主の座から引きずり下ろすことで復讐を果たすべく、一八も大会に参戦。平八の思惑は一八の参戦で大きく外れていくことになる。

……以上が『鉄拳1』の簡単なあらすじだ。

ここで、三島親子の争いを描いた物語がなぜシリーズの魅力のひとつになっているのか、その理由に迫りたい。

まず、当時リリースされていた他の対戦格闘ゲームの主人公は、純粋に武の道を極めようとするキャラクターや、悪をくじこうとする人物像が多く描かれていた。

一方『鉄拳1』では、主人公の一八が善悪に関係なく、ひたすら父親への復讐を果たそうとする姿が描かれる。

この家族への復讐譚が繰り広げられるシナリオは、当時はもちろん現在に至るまで、対戦格闘ゲームの物語としては非常に独特で珍しい。

そんな"目新しさ"だけではなく、さらには復讐というテーマが、主人公の動機から目的、そして達成まで徹頭徹尾、丁寧に描写されている部分も魅力のひとつになっている。

なお、一八は、父が開催した格闘技大会"The king of iron fist tournament"で勝ち進み、決勝戦で待ち構える平八を打倒。ついに一八は復讐という本懐を遂げる。

さらに、一八は幼少期に崖から突き落とされた借りを返すかのように、意識を失った平八を断崖絶壁から落としてしまうのだった(下の動画)。

こうして、一八が平八を崖から投げ落としたところで『鉄拳1』は幕を閉じる。

息子を修行のために崖から落とした平八に加えて、その復讐として父親を崖から投げ落とす一八は、対戦格闘ゲームに限らず前代未聞のキャラクター像だと言えるだろう。

02

◆『鉄拳2』:平八流の「倍返し」

『鉄拳2』
アーケード版: 1995年8月稼働開始
プレイステーション版: 1996年3月29日発売

『鉄拳1』で復讐を達成した後、息子・一八は三島財閥の当主となる。一方、父・平八は崖から落とされながらも、命からがら生還を果たしていた。

そんな平八は、一八に負けたことから修行を怠っていたことを嘆き、山ごもりをすることで武術に磨きをかけなおしていた。

しかし武術の面では心を入れ替えながらも、家族には一切容赦しない平八の人間性に変わりはなく、前作で受けた屈辱に対して、さらなる復讐を果たすべく息子・一八に戦いを挑むことに。

『鉄拳2』のシナリオで特徴的なのは、前作で平八が受けた復讐に対する仕返しを果たそうとする点だ。

今作の平八は山ごもりが功を奏したのか、『鉄拳1』で崖から投げ落とされた意趣(いしゅ)返しを果たすかのように、血も涙もない行動に打って出る。

その壮絶な意趣返しとは、戦いの決着後に意識を失っていた息子・一八を火山口に投げ落とすというものだった(下の動画の7:35~)。

こうして平八は、三島財閥の当主に返り咲く。

しかし、この"息子を火山口に落とす"という尋常ではない展開を目にしたプレイヤーは、衝撃のあまり唖然となっただろう。当時も今も、ましてや対戦格闘ゲームに限らずとも、衝撃的な結末と言えよう。

03

◆『鉄拳3』:孫相手でも容赦のない平八

『鉄拳3』
アーケード版: 1997年7月稼働開始
プレイステーション版: 1998年3月26日発売

前作『鉄拳2』で息子を火山口に放り込んだ父・平八は、三島財閥の当主に返り咲き、再び強大な権力を手にしていた。

なお本作『鉄拳3』では、これまでの物語とは毛色の異なる展開が繰り広げられる。それは、平八の孫である風間仁(かざま じん)の登場によってもたらされることになる。

仁は『鉄拳2』に登場した女性格闘家・風間準(かざま じゅん)と一八のあいだにもうけられた子どもで、本作では、平八の手によって育てられていた。

平八は、仁をただ育てるだけでなく武術の面でも指導するが、一八のときのように憎しみ合うことはなく、仁も平八のことを師として信頼していた。

しかしながら仁は、三島財閥の軍事力を強化しようとする平八の目論見に自分が利用されていることを知り、その結果、師弟関係どころか家族関係までもが崩壊してしまう。

そんななか平八は、利用済みで邪魔になった孫を消し去ろうとするものの、仁に返り討ちにされてしまう。

平八に勝利した仁は、一八のように残酷な手段を取ることなく、静かに平八のまえから姿を消すのだった(下の動画の1:01~)

『鉄拳3』では、平八の孫・仁に焦点を当てたシナリオが特徴的だ。

一方で、一八との親子ゲンカを終えた平八は、一家の祖父としていい加減丸くなっていてもよさそうなものだろう。しかし、孫相手だろうと一貫して非道な平八からは、ある種の信念のようなものが感じられる。

そうした一般的な家庭から逸脱した平八の人間性も、シリーズにおける魅力のひとつではないだろうか。

04

◆『鉄拳4』:平八、一八、仁が一同に再会

『鉄拳4』
アーケード版: 2001年8月稼働開始
プレイステーション2版: 2002年3月28日発売

本作では、『鉄拳2』で火山口に落とされながらも生還を果たしていた一八が表舞台に姿を見せる。そして、再び一八と平八との争いが描かれることになる。

『鉄拳4』では、生還を果たした一八がスーツ姿で登場。

© BANDAI NAMCO Amusement Inc.

その一方で、『鉄拳3』において平八に裏切られた仁は、彼への復讐よりも、三島家の血筋そのものに恨みを抱き、平八に戦いを挑もうとしていた。

しかし平八は、そうした仁の動きを事前に察知し、手駒をけしかけて拘束。仁は縛り上げられた状況で、祖父である平八との再会を果たすことになる(下の動画の9:39~)

また、平八と仁が対面した場には、仁の父親(であり平八の息子)である一八までもが息子の気配を感じ取って、姿を見せていた。

これまで壮絶な三島家のエピソードをピックアップしてきたが、この場面では三島家の男たちが一堂に再会した状況が描かれる。

だが、そこで繰り広げられたのは、一般的な家庭で考えられるような心温まる再会ではなく、平八の手によって孫が縛り上げられている異様な光景だった。

しかし、そこまで異様なシーンではないように感じてしまうのは、これまでのシリーズで丹念に彼らの確執が描かれてきたゆえではないだろうか。

05

◆『鉄拳5』:平八が爆散!?

『鉄拳5』
アーケード版: 2004年11月稼働開始
プレイステーション2版: 2005年3月31日発売

本作では、前作『鉄拳4』で三島家の男たちが一堂に会したシーンの数分後の時点からストーリーが始まる。

『鉄拳4』で平八に捕まって、縛り上げられていた仁は、なんとか抜け出し、本作の冒頭時点には逃亡を果たしていた。

一方、平八と一八は、"三島家が再会した建物"に残ったままとなっていた。すると突然、三島財閥の敵対企業が送り込んだ無数のロボット部隊が出現。

大量のロボットたちに、ふたりは応戦していくが、平八は数に押されて疲労を隠せなくなっていく。

そのスキを見逃さなかった一八は、平八の頭をつかんで無数のロボットたちのもとに投げ込み、その場から姿を消してしまう。

不意を突かれた平八は、成すすべもなく大量のロボット取り押さえられたままの状態で、ロボットの自爆攻撃によって爆散してしまうのだった(下の動画の1:25~)。

平八が爆破されてしまうシーンは、本作のオープニングムービーで見ることができる。この、"ゲームをプレイするまえに訪れた突然の展開"は数々のプレイヤーが言葉を失ったことだろう。

ちなみに『鉄拳5』は風間仁が三島財閥の当主となる場面で、エンディングを迎える。平八が姿を消し、仁が当主となる結末は、次作からの新たなストーリー展開を感じさせるシーンとなっている。

06

◆『鉄拳6』:親子ゲンカはついに世界戦争に

『鉄拳6』
アーケード版: 2007年12月稼働開始
プレイステーション3版/Xbox 360版: 2009年10月29日発売

前作で、敵対企業に狙われた平八が爆破されて以降、『鉄拳6』では仁が三島財閥当主の座を獲得していた。

すると、仁は一体どうしたことか、三島財閥の軍事力をもとに全世界へ宣戦布告をする。

その結果、世界は混乱に陥り、一般人の生活が脅かされるほどの戦乱が巻き起こってしまう(下の動画の00:20~)

そんななか、前作で平八を残して、ひとり逃げ延びていた一八が、仁の対抗勢力として躍進することとなる。

そして、いつのまにか三島財閥に対抗するほどの軍事企業で権力を握っていた一八と、三島財閥当主の仁をトップにすえた企業間戦争が発生。

『鉄拳6』では、従来から焦点が当たっていた平八と一八の親子ゲンカから物語が大きく転換し、今度は仁と一八による親子ゲンカがストーリー上で描かれることになる。

世界を巻き込むほどの"一八と仁の親子ゲンカ"が起きてしまった展開からは、まさに、争いが行きつくところまで行きついてしまった爽快感も感じ取れることだろう。

近代兵器による戦争だけではなく、一八と仁のふたりが直接拳を交わす場面も登場する。

© BANDAI NAMCO Amusement Inc.

07

◆『鉄拳7』:平八と一八が再び火山で殴り合う

『鉄拳7』
アーケード版: 2015年2月稼働開始
プレイステーション4版/Xbox One版: 2017年6月1日発売
PC版: 2017年6月2日発売

『鉄拳7』では、前作において一八と争っていた仁が突如として消息を絶つ。その後『鉄拳5』で爆散した平八が生還を果たし、仁と入れ替わるように表舞台へと舞い戻る。

そして、平八は、またたく間に三島財閥当主の座を取り戻すものの、前作から続いていた戦争によって世界全体は依然として混乱に陥っていた(下の動画の10:52~)。

『鉄拳7』の平八は、きちんとした当主らしいスーツ姿を披露することも。

© TEKKEN​™7 & ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

前作『鉄拳6』において、三島財閥の対抗企業に属していた一八。彼は『鉄拳7』では、三島財閥当主の座に返り咲いた平八と戦いを繰り広げることになる。

『鉄拳7』ではふたたび、平八と一八の親子ゲンカに焦点を当てたストーリーが展開され、混迷を極める世界の状況に終止符を打つため、両名が直接対決をもってして戦うことになる。

平八と一八が一騎打ちを繰り広げる舞台には『鉄拳2』で決戦の地となった場所と同様に火山が選ばれる。

© TEKKEN​™7 & ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

『鉄拳1』および『鉄拳2』を彷彿とさせるような一八と平八の直接対決は、往年のファンたちに懐かしさを感じさせると同時に、親子ゲンカがクライマックスへと向かっていることを予期させている。

そこで気になるのが、相手を火山口に放り込んでしまうような衝撃的なエンディングが繰り広げられるかどうかだろう。

凡庸な作品ならば、初代主人公である一八が勝つことが予想できるが、これまで予想だにしない展開を描き続けてきた『鉄拳』シリーズにあっては、その考えは通じないかもしれない。

善悪の垣根を越えて争う平八と一八による親子ゲンカの行く末は、勝者の予想がまったくつかない。

その結末は、ぜひ実際に『鉄拳7』をプレイして確かめてみてほしい。

(※写真はすべて家庭用ゲーム機版のものです)。

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