Pages

Thursday, October 29, 2020

世界一のハロウィンが行われる街、ロンドンデリーを回想する「前編」 - GQ JAPAN

市街からクルマで約40分の「Jungle NI」はお化け屋敷や森の中のミニバンジージャンプを楽しめる施設。https://ift.tt/2fJLUS2

Derry〜Londonderryとは?

取材やプライベートでの旅が続き、気づけば22カ国を訪れていた2019年。そのなかで“最も印象に残った旅先”のひとつとなったのが北アイルランドだ。いつもなら美食や絶景が旅の満足度の理由となるが、北アイルランドへの訪問はひと味違った。

ある意味、北アイルランドを知らな過ぎた自分にとって、そこは行くべき目的地であった。ハロウィンシーズン、わずか3泊の滞在で何を体験したか記していきたいと思う(今年は例年通りのハロウィンは行われない。しかし、現地からオンラインイベントが配信されるので、ぜひ注目して欲しい)。

訪れたのは北アイルランド第2の都市、ロンドンデリー。なじみのない街だったが、そこは“世界最大級のハロウィン”が行われる地だという。その祭りを経験するため、2019年10月29日から11月1日までをロンドンデリーで過ごすこととなった。ハロウィンに参加するからには仮装は必須だが、現地調達しようと準備ゼロで日本を出て、まずはダブリンで2泊を過ごした。

そして、北アイルランドに向かう前日、ダブリンのバーで以下のようなやりとりがあった。バーにいた女性に「ダブリンのあとはどこへ? 」と聞かれたので「ロンドンデリー」と答えたところ、「デリーと言った方がいい」と真顔で言われたのだ。一瞬、うんざりといった視線にも感じられた。

日本にいた時、地名の背景を分かっていなかった筆者は公式の言い方である“ロンドンデリー”を不思議な響きに思っていたものの、解決しないまま北アイルランドに向かおうとしていた。しかしこのバーでのやりとりをきっかけに、複雑な事情を把握していく。

目的地のロンドンデリーはアイルランド島の北に位置する英国領だ。つまり、イングランド、スコットランド 、ウェールズ、北アイルランドからなる「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」に属する。

もとはカシの森に由来するデリー(Derry)という名の街であったが、1613年にロンドンからの入植者が新たに城壁都市を造ったことをきっかけにロンドンデリーと改名された。

時は流れ1960年代半ば、北アイルランドではプロテスタント住民とカトリック住民の対立が激化し北アイルランド紛争が発生。街の呼び名はいっそうセンシティブなこととなり、アイルランド統一にも関わる政治的意味合いを強めていった。イングランドやスコットランドからきたプロテスタント系はロンドンデリーと呼ぶ傾向があるとも言われるが、地元ではデリーと呼ぶのが絶対だ。

実際に、ダブリンおよびロンドンデリーに滞在中の6日間、現地の人からロンドンデリーの名を聞くことは一度もなく、私も上記のバーでの会話以降はデリーと呼んでいた。その方が旅は楽しく進むとも察知した。また、メディアでは両方を表す“Derry~Londonderry”といった書かれ方も多々見受けられる。

名称の経緯を調べることから始まり、私はダブリンからロンドンデリーまでの約3時間のドライブの間、北アイルランド問題についての記事を読み漁った。いつしかクルマが英国領北アイルランドに入ると、iPhoneが別国に入ったことを知らせ、道路の交通標識がkmからmileに変わった。

10月末になると「Jungle NI」ではカボチャのランタン作りも体験できる。

ハロウィン前に過去の傷跡を知る

10月29日の午後7時、北アイルランドのハードな歴史をかけこみ予習した私は、やや神妙な心もちでロンドンデリーに到着。そんなモードでホテルに入ると、一転、そこは超ご機嫌な雰囲気に包まれていたから拍子抜けだ。

「City Hotel Derry」はかぼちゃや骸骨、魔女などハロウィンの飾り付けに溢れ、早くも猫耳をつけて食事をしている客もいれば、子供たちは着ぐるみで走りまわっていた。

一夜明け、10月30日はハロウィン前に街散策。ロンドンデリーはアイルランド島において唯一完全な形で現存する城塞都市であり、旧市街は全長約1.6km、幅3.7〜10.7mの頑強な壁に囲まれている。1613年から1619年に建設されたこの壁は、英国やスコットランドから来た入植者を守るために造られ、壁の上は旧市街の内外を見渡す歩道となっている。壁の上の散歩は街の全景を知ることにもなるので必須だ。

その後はボグサイド地区にある「Museum of Free Derry」を見学。ミュージアム周辺には北アイルランド問題に関する強いメッセージを表す壁画が多く存在し、街の風景は重さを増す。

館内には3500人以上の死者を出した悲劇、北アイルランド紛争(1968〜1998)の資料が展示され、紛争の当事者である語りべが当時を振り返る。過去の傷跡と終わらない根深いものを目の当たりにし、ミュージアムを出る時には再び神妙な気持ちになったのだった。

とはいえハロウィン前夜。中心広場に戻るとすでに仮装した市民やパフォーマーが溢れ、クレーンによる宙吊り芸やハロウィンライブも登場。みなが浮足だち、前夜でこれほどなら明日の本番はどうなってしまうのだろうという盛り上がりだ。

つまり、「Museum of Free Derry」を出た30分後には明るい気持ちに戻っていた。ひとつの街にいてこれほど光と影が混在する旅をこれまで経験したことがない。その強烈なコントラストによって、ロンドンデリーはひときわ印象深い地となったのだ。

ライブミュージックも行うパブ「Peadar O’Donnell’s」。デリーの街ではカタルーニャやバスクの旗がいくつか掲げられていた。

ロンドンデリーのパブは健全な相席屋

上記はハロウィンシーズンこその話だが、パブではまた別の思い出がある。パブへは一人で入ったが、こんなに地元の人に気さくに話しかけられる酒場は初めてだった。ちょうど「ラグビーワールドカップ2019」の開催時期だったため、日本人の私はラグビーを愛する市民たちに「日本は強かった」「ラグビーを観に行ったか? 」と輪に入れてもらったのだ。

ちなみにラグビーアイルランド代表はアイルランド共和国と英国領北アイルランドからなる合同チーム。実質2カ国によるチームのため、試合前には国家ではなくラグビーのために作られた“アイルランズ・コール”を歌う。大会開幕時には世界ランキング1位に上りつめた強豪であったが、10月28日に日本代表はアイルランド戦に勝利した。

ハロウィンシーズンには街のいたる所に骸骨が出現する。

パブでラグビーをきっかけに会話を進めていると、決勝について「南アフリカとイングランドのどちらを応援する? 」と聞かれた。そこで「南アフリカ」と答えると「気が合うな」と冗談めいた感じで言われたりする。似たような会話は他の席でもあった。あくまでライトなライバル視だ。

その前にダブリンのパブで見たのは、南アフリカvsウェールズ戦で英国ウェールズを応援するアイルランド人たち。アイルランド島における英国との関係性を少し垣間見たW杯ウィークだった。

ともあれ、ロンドンデリーのパブ「Peadar O’Donnell’s」はとびきり楽しかった。どこに座っても「相席屋」になる状態で、大らかで陽気な市民たちが旅人を優しく迎え入れてくれる。なぜなら彼らにとってパブはお喋りをするために行く場所であり、お喋りがビールのつまみだから隣が誰であれフレンドリーなのだ。

同じビールをひとり10杯飲み、語らい、奢り合い、ライブ演奏に身を弾ませる人が集うパブは飲兵衛の楽園。筆者もギネスを4杯飲み、「飲んだあとの〆はウイスキーだ」と話す現地式の〆を真似してホテルに戻った。

いよいよ翌日は“世界一”と称されるハロウィン当日。魔女の衣装をゲットしたが、それだけでは地味すぎると当日知ることになるのだった。

https://ift.tt/3jCZ4yl

https://ift.tt/3kJRSBV

文・大石智子

Let's block ads! (Why?)



"目的地" - Google ニュース
October 29, 2020 at 04:00PM
https://ift.tt/3oEc3DM

世界一のハロウィンが行われる街、ロンドンデリーを回想する「前編」 - GQ JAPAN
"目的地" - Google ニュース
https://ift.tt/374vqfh
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update

No comments:

Post a Comment