「移動」が制限される中、それそのものが楽しみだったことをあらためて感じる。第一義は、目的地に向かうことではある。しかし「移動」の価値は、目的を果たすことだけではない。居心地の良い歩きたくなるストリートづくりに向け国が「ウオーカブル」を打ち出しているように、モビリティーには今後、「まちを楽しむ」という要素が強く求められそうだ。
まちなかを移動するのに、よく路線バスを利用する。地下鉄と違って、地上ですぐに乗り降りできるうえ、車窓の風景を楽しめるのがいい。目的地の近くにサイクルポートがあれば、春や秋の好天に恵まれた日は、シェアサイクルの利用も心地良い。
今はまだ社会実験の域を出ないが、舟運にも大きな期待を寄せている。シェアサイクルと同じく天候の影響を受けやすいが、定員を超える人数を乗船させないため混雑とは無縁。陸路と異なる視点から眺める景色の移り変わりはとても新鮮だ。
「陸」「海」と来れば、次は「空」。注目したいのは、都市型ロープウエーである。
ロープウエーと言えば、山登りに代わる交通手段という印象が強いが、世界を見渡せば、都市型の例は少なくない。魅力はまさに、まちなかで空中散歩を楽しめる点。まちの全体像を眺めながら目的地に移動できるため、観光にはもってこいだ。
最近は日本でも、いくつかの都市で話題に上った。東京都江東区や福岡市では途中で断念したものの、首長自らがその導入を提案した経緯がある。唯一、実現にこぎつけたのが、横浜市だ。開業は2020年度末の見通し。目下、停留所や支柱の建設工事が進む(写真1)。
運行区間は、JR桜木町駅前と運河パークの間(図1)。直線で約630m。歩くと10分以上はかかるこの区間が、8人乗りゴンドラで、わずか2~3分で結ばれる。運河パークに隣接するショッピングセンター「横浜ワールドポーターズ」、その先に立地する客船ターミナルと店舗・ホテルの複合施設「横浜ハンマーヘッド」や「横浜赤レンガ倉庫」へのアクセスは大きく改善され、交通ネットワークが強化される。
しかしこのモビリティーの価値は、それだけにとどまらない。最高約40mの高さから、横浜臨海部の景観を楽しみながら移動できる点こそ、何よりの魅力だ。楽しみながらの移動で回遊性が高まれば、横浜臨海部でにぎわいの創出も図れる。地元横浜市では、このモビリティーを「にぎわい創出装置」としても位置付ける。
その導入に向け動いたのは、市の都市整備局だ。
2015年2月、「横浜市都心臨海部再生マスタープラン」を策定し、都心臨海部の2050年の将来像とその実現に向けた3つの基本戦略を打ち出した。その基本戦略に基づく5つの施策の一つに位置付けたのが、「まちを楽しむ多彩な交通の充実」である。
自ら事業に乗り出す民間を市が公募
具体的には、新たな交通の導入や水上交通ネットワークの拡充によって、観光客の呼び込み、交流人口の増加、まちのホスピタリティー向上を図る。この「新たな交通」のイメージの一つとして掲げたのが、都市型ロープウエーである。
この「新たな交通」は、民間事業者による運行を想定していた。市都市整備局企画課長の松井恵太氏は「市が直営でできることには自ずと限界がある。民間の資金力やノウハウを生かし運行してもらうことを考えていた」と説明する。
2017年10月には「まちを楽しむ多彩な交通の充実」に向けた提案の公募に踏み切り、翌18年2月までの間に審査・選定を終えた。公募にあたっては、整備・運営に必要な費用は公費負担を伴わず、提案者自らが負担することを明確に条件付けた。
そこで選定されたのが、民間9団体からの提案である(図2)。「民間自ら主体的に事業化しようという提案はすべて受け入れた」(松井氏)。2018年10月には、これらの提案の中で実現第一号として、NTTドコモが未来シェアや市経済局と共同でオンデマンド乗合交通システム「AI運行バス」の実証実験に乗り出した。
(図2)市では「まちを楽しむ多彩な交通」に対する民間事業者からの提案を地図上に落とし込んだリーフレットを制作した。提案9団体は、NTTドコモ、エムシードゥコー、神奈川県トヨタ販売店、関内・関外地区活性化協議会、京浜急行電鉄、国際航業、泉陽興業、横浜港振興協会を代表とする共同体、ルグランブルーライン(構成員:ケーエムシーコーポレーション、横浜グランドインターコンチネンタルホテル)※このほか地図上に落とし込めない提案として、「位置情報を活用したサービス基盤の構築」「オンデマンド乗合交通サービス」「ハード・ソフト両面にわたる各種モビリティ・サービスの導入、シームレス化」がある(出所:横浜市)
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JR桜木町駅前と運河パークを結ぶ都市型ロープウエーは、大阪市内に本社を置く泉陽興業が提案したものだ。同社は全国各地で遊園地やテーマパークの企画から運営までを担い、横浜臨海部では1990年8月以降、大観覧車で有名な遊園地「よこはまコスモワールド」を運営する。
事業に乗り出す狙いは、観光振興とにぎわいのまちづくりへの貢献。同社代表取締役社長の山田勇作氏は「ロープウエーの運行によって都市の観光振興やにぎわいのまちづくりに役立てると考え、かねてその実現を目指していた」と明かす。
可能性を感じるようになったきっかけは、鶴見緑地(大阪市、守口市)を会場に1990年4~9月まで半年にわたって開催された「国際花と緑の博覧会」である。同社は5社で構成する共同企業体(JV)の代表企業として会場内を運行するロープウエーの建設・運営・管理に携わった。会期中の利用者は約443万人。そこに手応えを感じたという。
提案を受け入れた市都市整備局は2018年3月、泉陽興業との間で包括連携協定を締結し、そこで公民連携の役割分担を明確化。公募の前提条件に掲げたように事業主体を泉陽興業と位置付け、市都市整備局は調整窓口に徹することを確認した。
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June 01, 2020 at 08:13AM
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