今年2月、聖火リレーのコース取材で訪れた岩手県陸前高田市で道に迷った。
目的地は6月18日の同市の聖火リレーでスタート地点となる奇跡の一本松。市役所仮庁舎近くにある三陸沿岸道路の高架下を抜けたところで、最短で行ける道路が通行止めになっていた。やむなく左折で入ったかさ上げ地で道路標識を見逃し、右折すべき交差点を直進してしまったからだ。
同市は東日本大震災の津波で中心市街地が壊滅し、1700人超の死者・行方不明者を数える県内最大の被災地。何度も訪れた場所だったから、程なく間違いに気付いて目的地に到着できた。しかし、被災地を担当する記者としては失格である。
心の中で「勤務地の盛岡市から車で2時間半近くもかかるから…」「取材態勢も縮小し、岩手は香川を除く四国3県分の広さがあるから…」と言い訳を並べ立てる自分自身が、震災の記憶の風化に手を貸しているような嫌な気分にもなった。
取材当日は土曜日。奇跡の一本松の近くにある国の追悼施設と県の津波伝承館、道の駅高田松原の複合施設は多くの人々が訪れていた。救われた気分になった。だが、隣県の宮城県には多くの犠牲者が出た南三陸町の防災対策庁舎、石巻市の大川小旧校舎が現存する。過酷な現実を伝える本物の迫力は風化防止につながりそうだ。県内にそれはない。不安が頭をよぎった。(石田征広)
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March 12, 2020 at 03:00PM
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【もう一筆】現実を伝える本物の「迫力」 - 産経ニュース
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