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Saturday, February 15, 2020

【書評】『風神雷神 上・下』原田マハ著 「隠し玉」でロマン描く - 産経ニュース

 『楽園のカンヴァス』でルソーを、『暗幕のゲルニカ』でピカソを描いてきた原田マハ。泰西画家の人と作品に関する随筆や小説では右に出る者のいない巧者である。その作者の“隠し玉”は、意外や俵屋宗達であった。宗達といえば、ご存じ「風神雷神図屏風(びょうぶ)」だが、作者は、一筋縄ではいかない大胆な発想と巧妙な仕掛けを用意し、宗達と泰西を見事に結びつけた。

 プロローグで、京都国立博物館研究員の望月彩が、マカオ博物館学芸員、レイモンド・ウォンからマカオ行きを打診されることで物語の幕が開く。彩がマカオで見たものは、この地に存在する、いまひとつの「風神雷神図」、天正遣欧使節団の一員、原マルティノの署名が残る古文書、そして、そこに書かれた“俵屋宗達”の四文字-。

 ここから本書は、一気に天正8(1580)年から天正13年の壮大な物語の中へ読者を拉致し去る。

 織田信長から“野々村伊三郎宗達”の名を授けられた宗達は、元は京の扇屋の息子。それが狩野永徳の下、信長の命で「洛中洛外図」を完成させる。そこには、南蛮の絵に興味を持った宗達ならではの筆致があった。これが天正遣欧使節団に唯一、絵師でありながら宗達が参加する理由となる。信長の密命を胸に-。

 やがて、宗達とイタリア・ルネサンスとのめくるめく出会いへ。人間を描くより、音楽や絵画から得る感動を文字に表すのは難しいとされているが、そこは原田マハである。宗達の中で日本の風神雷神と、ギリシャ神話のそれ(アイオロス、ユピテル)が出会うシーン、宗達の手に一条の光がひらめく箇所で、私たちは確かにその光を見るのだ。

 さらに、レオナルド・ダビンチの「最後の晩餐(ばんさん)」を目の前にしての一人の少年画家との出会い。作品にはさまざまな伏線が張られており、詳述はできないが、たとえば、東西を分かたぬ、「美」を愛でる心などは、本書を貫く明確なテーマといえるだろう。

 皮肉なリアリストは、この一巻は幻想ではないかというかもしれない。が、幻想だからこそ、本書は大いなるロマン足りうるのだ。(PHP研究所・各1800円+税)

 評・縄田一男(文芸評論家)

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February 15, 2020 at 06:30PM
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