きょう12月3日から中央競馬は師走の中山、阪神、中京開催がスタート。2022年の日本競馬も「完走」まで残りわずかです。
今年の競馬界も数々の話題がありましたが、6月に発表された「ダートの3歳三冠競走創設」も、大きな動きの一つに挙げられるでしょう。24年から中央、地方の垣根を越えて国内ダート路線のカレンダーが激変することを伝えた6月の発表は、筆者にとっても大きなインパクトがありました。それから5カ月余り。当時以上のインパクトを感じさせる、近未来のダート競馬に関する話題が競馬界に投じられました。
東京都内で11月28日、平地競走を施行する地方競馬の全主催者、日本中央競馬会(JRA)、地方競馬全国協会(NAR)が、「全日本的なダート競走の体系整備」について共同記者会見を行い、筆者も足を運びました。内容はまず、前記の「3歳ダート三冠」路線の詳細について。羽田盃、東京ダービーに続く10月の三冠最終戦の名称を「ジャパンダートクラシック」(JDC)と改めると発表されました。23年までは7月に施行される「ジャパンダートダービー」からの模様替えとなります。
三冠へのステップレースはどう配置されるのかと思っていました。上半期に関しては「南関東3歳重賞のダートグレード化」が答えでした。1月のブルーバードカップ(船橋)、2月の雲取賞、3月の京浜盃(ともに大井)の3つが中央所属馬に開放されダートグレード競走に。中央のユニコーンステークス(現在6月施行)は東京ダービーへのステップとなり、実施時期も前倒しされる見通しです。
秋のJDCへのステップに設定されたのは、8月の中央のGⅢ、レパードステークスと、新たにJpnⅡとなる岩手競馬伝統の3歳重賞、不来方賞(9月)でした。三冠が組まれ、そこに向けたステップレースが組まれ、10月に三冠が終わればJBCクラシックやチャンピオンズカップ、東京大賞典で年長馬と合流する。クラシック3冠からジャパンカップ、有馬記念に向かう中央の芝のスタイルに近づきます。もともと南関東三冠のカレンダーに慣れていた筆者にとっては、路線体系をイメージしやすくなった印象を受けました。
むしろ、古馬路線の体系の改変の方が驚きの連続でした。中距離路線で「11月から1月までGⅠ・JpnI競走が連続して設定されていることを踏まえ」、川崎記念(川崎・2100メートル)を4月上旬に変更。短距離路線では、JpnⅡのさきたま杯(浦和・1400メートル)がJpnⅠに格上げの上、6月に施行されます。牝馬路線でも上半期の頂点にエンプレス杯(川崎・2100メートル)が位置付けられ、時期は5月に移動。クイーン賞(船橋・1800メートル)は2月に移り、1月のTCK女王盃(大井=JpnⅢ)が「兵庫女王盃」に名称を変更して4月の園田に移動……。長く頭の中に描かれていた「ダート競馬の年間カレンダー」とは相当に違っていました。書き換えるまで、しばらく時間がかかりそうです。
ピラミッドの頂点が明確に
一連の体系見直しのポイントは「カテゴリーごとの頂点競走を明確化すること」(地方競馬全国協会・相川貴志参与)。確かに、短距離なら6月のさきたま杯と11月のJBCスプリント。牝馬なら5月のエンプレス杯と11月のJBCレディスクラシック。中距離路線なら上半期に川崎記念から帝王賞、下半期にJBCクラシックから東京大賞典。各路線の核心となるレースを時期、配列も含めて整理し、それぞれの核心につながる重賞も、新たに線としてつなぎ直した印象です。
「日本のダート競馬」というピラミッドの頂点を明確にさせたものの、そこに至るまでに整備すべき点も数多いと感じました。例えば、従来は地方所属馬の目標となっていた非ダートグレードの主要レースはどうなるのか? 会見では近年地方競馬の「3歳秋のチャンピオンシップ」最終戦で、3歳秋のナンバーワン決定戦となっていた岩手のダービーグランプリが、不来方賞のJpnⅡへの改変を受けて「来年で終わる」(岩手県競馬組合・鈴木優事務局長)と発表されました。
同様に近年、3歳短距離馬の秋の大きな目標となっていた兵庫の地方限定重賞、楠賞も「現在検討中で、それ以外にも現在の兵庫の三冠競走について色々と検討を進めている」(兵庫県競馬組合・稲葉収事業部長)とのこと。他の問題についても「今後深く検討していかなければ」「これが最終形とは考えていない」といった発言が各所から出ました。各地の地方施行者にとって、今後手をつけるべき課題は山積しているように映ります。
全国的な統一格付け基準が導入され、ダートグレード競走という名称が誕生したのは1997年。24年の時を経て「日本調教馬初の北米ダートGⅠ制覇」という偉業を、最高峰のブリーダーズカップ(ディスタフ)で達成したマルシュロレーヌ(現繁殖牝馬)がステップにしていたのは、他ならぬダートグレード競走(ブリーダーズゴールドカップ=門別・JpnⅢ)でした。新たな体系の運用が始まるのは2歳戦が23年、3歳と古馬は24年からになります。世界の頂をつかんだ牝馬を輩出するに至った日本のダート競馬は、再び新たな挑戦を始めることになります。
国際的な評価を高めるべく、28年からは段階的にローカルグレードの「Jpn」表記を廃止することも打ち出されました。全てのダートグレードを国際競走化する、壮大な目標の達成時点に掲げられたのは「2033年」。いかに長期的な取り組みであるかがうかがえます。今回発表された体系も今後、様々な改良が加えられていくことでしょう。また、運用してみなければ見えない課題があることも確か。改良が続く間にも、日本の優秀なダートホースは海外挑戦を続けるでしょう。その動向を注視するとともに、願わくは現地でその姿を見届ける機会が訪れることを祈りたくなる、今回の発表でした。
(ラジオNIKKEIアナウンサー 大関隼)
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