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Saturday, April 2, 2022

「人狼ゲーム」壮大な世界観も - Au Webポータル

SF人狼ゲーム『グノーシア』の魅力に迫ります(画像は『グノーシア』公式サイトより)

「テレビゲーム」は子どもがやるものと思われがちですが、書籍や映画ともまた違う独自のシリアスな、あるいはユニークな作品が多数あります。その魅力は奥深く、大人の趣味として楽しめるほどに成熟しているといっても過言ではありません。

そこでこの連載では、ゲームの評論やコラムを10年以上書き続けているゲームライター、いわばゲームで遊ぶプロである渡邉卓也氏が、ゲーマーからは人気でも一般的にはあまり知られていないであろう著名な作品や傑作を紹介します。

第5回は、名古屋の4人が作り上げたSF人狼ゲーム『グノーシア』を取り上げます。

人狼ゲームなのに1人で遊べる

連載第2回『「人に騙されてなぜか笑顔出る」凄いゲームの正体』では、みんなで騙し合いをする「人狼ゲーム」の作品を紹介しました。

ベースになる人狼ゲームのルールをおさらいすると、村のなかに紛れた人狼を探すために議論する複数人向けの遊びです。村人たちは話し合って人狼を探り、人狼と疑われる村人を毎晩1人吊る(縛り首にする)形で排除を狙います。逆に人狼はバレないように村人に紛れ込み、毎晩1人誰かを襲っていきます。

すべての人狼を排除できれば村人側の勝利。逆に人狼側は村人を消していき、「村人の数=人狼の数」になれば勝利となります。

複数人で楽しむのが基本なので、第2回の記事を読んで「興味はあるけど一緒に遊ぶ人がいない」だとか「初心者なので参加する勇気がない」と思ってしまった人もいるでしょう。

実はそんな人にぴったりの作品もあるのです。今回紹介するのは『グノーシア』。本作は名古屋のゲーム制作集団「プチデポット」によって開発された作品で、なんとたった4人で作り上げた傑作となっています。

『グノーシア』は「日本ゲーム大賞2019」でゲームデザイナーズ大賞の最終選考にまで残ったほか、「CEDEC AWARDS 2020」ゲームデザイン部門で優秀賞を獲得しています。「1人で遊べる人狼ゲーム」というのも、なかなか珍しい作品といえるでしょう。

(画像は『グノーシア』公式サイトより)

さて、人狼ゲームは人間のなかに紛れた人狼を探すために議論する複数人向けの遊びなわけです(本作では「グノーシア」と呼ばれる人狼的な存在を見つけ出すのが目的)。しかしこれを1人で遊ぶとなると、どうなるのでしょうか? 『グノーシア』では、さまざまなキャラクターとコマンドで議論をしていくことになります。

実際のプレイ方法はシンプルで、「疑う」「かばう」などの行動を選択するだけ。その行動によって各キャラクターは誰を疑うのか、あるいは誰を信頼するのか変化していきます。そして最終的に投票を行い、最多数を獲得してしまった人がコールドスリープ(人工冬眠、人狼ゲームにおける縛り首に)されるのです。

ただし、議論のすべてがプレイヤーの思いどおりになるわけではありません。本作のキャラクターはそれぞれ個性があり、直感で誰がグノーシアかわかってしまう人もいれば、極めて論理的に答えを求める人もおり、あるいはうそが苦手ですぐグノーシアであることがバレてしまうような人もいます。

この個性豊かなキャラクターが『グノーシア』の大きな魅力です。見た目はかわいいけれどもどこか恐ろしさも感じさせる「SQ」、どう見てもグレイ型宇宙人なのに自称人間の「しげみち」、しゃべるイルカの「オトメ」、無口なのに議論できる美少女「ククルシカ」など、バリエーション豊か。舞台は未来の宇宙船なので、われわれの常識では測れないキャラクターだらけなのです。

1プレイ最大15分、ループを繰り返して真相へ

本作ではいわゆる「役職」が用意されています。誰がグノーシアなのか一晩に一回調べられる「エンジニア」、コールドスリープされた人の役職がわかる「ドクター」などがいるため、それを手がかりにグノーシアを見つけだしていくのです。

しかし、グノーシア側もうそをついてこれらの役職を詐称することが可能です。はたして誰が本当のことを言っているのか? あるいはいかにうまくうそをつくのか? 論理的にしっかり考えないと答えが見えてこないことも、答えがわかってもみんなの意見がまとまらなくてグノーシアを排除できなかったりすることもあるでしょう。

ちなみに、本作は1プレイ最大15分程度で終わります。「それだとあまりにもあっさりゲームが終わってしまうのでは?」と思うかもしれませんが、ご安心ください。本作の主人公はなぜかループに巻き込まれてしまっており、毎回条件が変わるグノーシア探しの繰り返しから逃れられないのです。

そして、このループから脱出することも本作の目的のひとつ。ループから逃れるには情報を集めるのが重要で、各議論でさまざまな行動をとって各キャラクターの秘密を探っていくことになります。

(画像は『グノーシア』公式サイトより)

例えば「ジナ」というキャラクターは一見するととても地味な女性です。しかし芯の強さを隠し持っており、時にとんでもないことを行います。女性にセクハラばかりする「沙明」はひどい人間に見えますが、とある過去を持っていたりするのです。

(画像は『グノーシア』公式サイトより)

議論をしながらループを繰り返すと各キャラクターのストーリーもどんどん明らかになり、彼らに愛着が湧いてくるでしょう。1人で遊ぶ人狼ゲームですが、『グノーシア』を遊んでいるときは決して孤独ではないのです。

ちなみに、ゲームを繰り返すと経験値が獲得でき、主人公の能力を上げることができます。能力が上がればうそを見抜けるようになったり、敵から狙われにくくなったりと議論がやりやすくなるので、人狼ゲームが苦手なプレイヤーでも遊びやすくなっています。

「1人で遊ぶ人狼ゲーム」としての特別な体験

(画像は『グノーシア』公式サイトより)

すべての情報を手に入れたとき、プレイヤーはループから脱出することができます。このとき見事に伏線が回収されるうえ、ゲームでしか描けないストーリー体験になっているのも『グノーシア』の大きな魅力です。

やはり『グノーシア』は1人用なので通常の人狼ゲームとは違う部分もいろいろあるのですが、その代わりに1人で遊ぶからこその特別な体験が得られるのです。人間とのコミュニケーションはありませんが、キャラクターたちと触れ合える時間があると表現できます。

人狼ゲームを何度も楽しんでいるとキャラクターたちに愛着が湧き、謎めいたストーリーが徐々に明らかになっていく。

真相が判明したとき、きっと「こんな壮大な世界をたった4人で作り上げたのか!」と驚くことでしょう。

・遊べるゲーム機:PS Vita、Nintendo Switch、PC
・公式サイトはこちら

前回:人間模様を描きすぎ「怪作になったゲーム」の正体
前々回:ゾンビゲームなのに「感動で震える」超傑作の魅力

(渡邉 卓也 : ゲームライター)

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