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Tuesday, March 8, 2022

【ビブリオエッセー】壮大な想像世界への驚き 「三体」劉慈欣著 大森望、光吉さくら、ワン・チャイ訳 立原透耶監修(早川書房) - 産経ニュース

あまりに壮大で、追いつくのが大変だった。

『三体』というSF小説を知ったきっかけは友人が待ち合わせに遅刻したからだ。待っている間に書店の「推し本」のコーナーで見つけた。著者が中国人と気づいて中国人留学生の私は驚いた。中国人SF作家をあまり聞いたことがなかったからだ。しかも世界的ベストセラーだという。これは読まなきゃと思った。

最初は「地球往事」3部作として出版されていた中国語版(私にとっては母国語だが)で読み、そのあと日本語訳で読んだ。今は第2部の『三体Ⅱ 黒暗森林』上下を読み終えて小休止といったところだ。

第1部はエンジニアの汪淼(ワンミャオ)を中心に展開する。宇宙の彼方から三体人の文明が地球侵略を狙っている。その存在に気づいた一群の専門家たちがいた。文中、三体問題など科学の専門用語や解説も多く、理解しにくいし、場面が次々に替わるので簡単に筋書きが述べにくい。ただ第2部で展開する地球人の宇宙艦隊と三体人のテクノロジーとの息づまる攻防は圧倒される。その壮大な世界観、想像力を絶賛したい。

印象的なのは冒頭、文化大革命の場面だ。反動的とされ、父親を殺された天体物理学者、葉文潔がもう一人の主人公だが、「人類と悪との関係」について「大海原とその上に浮かぶ氷山の関係かもしれない」とつぶやく。私は今も、ネットで意図的な悪意や炎上がはびこり、真実を探すことの大変さを思った。

文潔は終盤、人類史上初めて、地球外からのメッセージに目を通した。その後、三体文明に応答する。地球人の意識を変えてもらおうと。長い長い戦いがここから始まる。

さらに読み進めよう。物語の森に迷い込んで想像を絶する出口にたどり着きたい。

奈良県橿原市 方可歆(ファンカキン)(22)

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