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政府が20年10月にカーボンニュートラルの達成を宣言してから1年あまりが経過した。50年までに二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにするという、壮大な社会実験が始まったのだ。環境対策と言えば聞こえがいい。しかし、筆者はカーボンニュートラル関連の取材を重ねるほど、利益を追求する民間企業の力だけで達成するのは難しいだろうと感じるようになった。
一企業が取り組むにはスケールが大きすぎる
これまでに多数の企業や業界団体が、政府方針に同調する姿勢を示している。中には、企業単体で独自の達成時期を掲げるところもある。もちろん、業種や企業ごとに事情は異なるだろう。しかし、カーボンニュートラルを目指すと宣言する民間企業のニュースを耳にするたびに、本気で実現する見込みがあって明言しているのかどうか、聞いてみたくなる。
製造業であれば、製品のライフサイクルやサプライチェーンの全体を見直す必要があるだろう。日本を代表する大企業であったとしても、一企業が取り組むにはスケールが大きすぎる。しかも、CO2削減は個別企業の利益に直結しにくい活動だ。
分かりやすい例が、電気エネルギーの利用である。カーボンニュートラルに向けた取り組みとして、多くのメーカーが生産活動で消費するエネルギーにおける電気の比率を高めている。生産設備の駆動だけでなく、材料の加熱や部材の運搬なども含めた電化だ。
しかし、現在の日本の電源構成の約7割が化石資源による火力発電であり、原理的にCO2を排出する。生産活動で消費する電力を、旧来の火力発電で賄っているとすれば、その効果には疑問符が付く。再生可能エネルギーや原子力による発電が中心の国で造った製品と比べてしまえば、脱炭素な製品とは言いにくい。
もちろん、現場で省エネルギーを追求したり、化石資源由来の材料を減らしたりといった取り組みもある。日本企業が得意とする現場レベルの改善を積み重ねることも無駄ではないが、企業単体での電化による効果はすずめの涙のようにも感じる。
からの記事と詳細 ( 民間企業の「脱炭素宣言」は本気なのか、宣伝に終わるのか - ITpro )
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壮大な
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