12月20日夜、トルコリラは史上初めて対ドルで30%以上も急騰し、世界を驚かせました。
20日の朝、トルコのテレビのニュース番組で流されるテロップには、「利下げ以外、私に何も期待するな」というエルドアン大統領の発言が繰り返し流れていました。この発言を受けて、前週の週末の17日、金利引下げにより1ドルが17リラを超えたばかりだというのに、この日も朝早くから18リラを突破しました。
ところで、エルドアン大統領がインフレ率が上昇しているのにもかかわらず、利上げで金融引き締めを図るのではなく利下げにこだわっているのは、イスラム教の教義(シャーリア)では金利が禁止されており、金利は悪だと考えているためです。資本主義に金利はつきものであり、禁止することはできません。しかし、インフレに伴う高金利が国民を苦しめており、利下げをしてお金を借りやすくすれば、海外からの投資を呼び込んで経済活動が活発になるという大統領独自の理論を元に、トルコ政府は今年後半だけで4回も政策金利の引き下げに踏み切りました。市場はそれに挑むように、この2か月間ドルをはじめ、ユーロ、金の価格が急騰したことから、国民も相当浮足立っていました。不動産の売却金を金貨に注ぎ込む人、もらったばかりの給与でドルを購入する人、中古車を転売して利益を上げる人など、筆者の身近なところからもさまざまな話が聞こえてきました。その間に物価も急騰し、インフレがますます加速しました。
それでも大統領は利下げを強調し、市場を煽り立てたことからリラ安は留まることを知らず、20日には1ドルが18リラ、1ユーロが20リラ、金1グラムが1,000リラを突破しました。あまりの高騰ぶりに国民の間で不安が高まったその夜、突然新しい預金体系が発表されました。これは、リラ建て定期預金で預金時より外貨が上がった場合に預金の目減り分を政府が保証するというものです。その後深夜近くになって、政府系銀行が巨額のドルを売却したことからドルは一挙に12リラ近くまで急落し、それに伴ってユーロや金も暴落しました。これを受けて、大統領は、「リラの価値は守られた」と勝利を宣言しました。外貨や金買いで一攫千金をもくろんでいたのに、外貨や金の高騰による金儲けどころか、高値買いで大損した人たちが相当いると言われるなか、リラの価値を守るために国家の威信をかけて仕掛けられた壮大なギャンブルは、こうしてひとまず幕を閉じました。
PickUp編集部 トルコ特派員
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