1962年7月8日、グレッグ・スプリッグス氏は、家族とともに米ハワイ諸島の北西にあるミッドウェー環礁を訪れていた。父親に連れられて島の一番高い場所まで登ると、そこは夜の闇に包まれていた。まもなく、1500キロメートル離れた別の環礁から、米軍の核融合爆弾「スターフィッシュ・プライム」を乗せたロケットが打ち上げられる予定だった。
「父は、小さな明かりがちらりと見える程度だと思っていたので、見逃さないように方向をしっかり確認しようとしていました」と、スプリッグス氏は当時を振り返って言う。
そんな心配は無用だった。1.4メガトン級、広島に落とされた原爆の500倍の威力を持った核爆発が、見えないはずはなかった。
「爆発すると、空全体がまるで昼間のように明るくなりました」。スターフィッシュ・プライムが爆発した高度400キロメートルは、現在、国際宇宙ステーションが周回する軌道とほぼ同じ高さだ。最初の爆発から約15分間、爆発によって生じた荷電粒子が大気中の分子と衝突して、人工のオーロラが現れた。遠くニュージーランドからも、このオーロラを見ることができたという。
爆発に伴う電磁パルスの影響で、ハワイのラジオ局は機能不全に陥り、緊急サイレンが鳴り、街灯が消える騒ぎになった。
その翌年の1963年、米国、英国、ソビエト連邦は部分的核実験禁止条約に調印した。以来60年近くにわたって、宇宙空間での核融合爆弾(水爆)実験は行われていない。スターフィッシュ・プライム実験の結果は、核爆発によって大量の放射線が地球の磁場に当たるとどうなるかを示した。(参考記事:「あわや街が消えていた、米国に2発の水素爆弾が降った夜」)
現在、米ローレンス・リバモア国立研究所の兵器科学者として、過去の核実験映像を保存・分析するスプリッグス氏は、当時のことを今もよく覚えている。「あれから何年もたってから、父にこう言いました。『将来、核兵器物理学者になると、あの時にわかっていたら、もっと注意して見物したんだけどな』」
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