[23日 トムソンロイター財団] - オーストラリアを象徴するサンゴ礁「グレートバリアリーフ」に迫る脅威について国連が警鐘を鳴らしたことに対し、環境保護活動家や研究者は23日、同国政府がもっと思い切った気候変動対策を打ち出し、地球温暖化ガスの排出量をさらに削減し、環境に優しい経済を生み出す必要があると指摘した。
オーストラリア北東岸の沖合に広がる、世界で最も広い領域にわたる壮大なサンゴ礁生態系であるグレートバリアリーフについて、国連パネルは今週、「危機にさらされている世界遺産」に登録すべきだと勧告。オーストラリア政府は強い反発を示した。
「危機遺産」登録に関する最終決定の場は、7月に行われる世界遺産委員会となる見込みだ。
気候科学者のウィル・ステッフェン教授(オーストラリア国立大学)は、「これを機に、オーストラリア政府が自国の温室効果ガス排出量の急速かつ大幅な削減に向けて、これまでよりはるかに積極的・精力的な行動を取るというのが、今回の勧告がもたらす最も重要な成果となるよう願っている」と述べた。
「政府に対するプレッシャーは増しているが、彼らが気候変動に対する有意義な行動を取らざるをえなくなるレベルまで高まってほしいものだ」とステッフェン教授はトムソンロイター財団に語った。
グレートバリアリーフは1981年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)により世界遺産に登録された。だが過去30年の間に、サンゴの半分以上が死滅している。
グレートバリアリーフは2015年にも「危機」認定を受けかねない状況だったが、このときは、オーストラリア政府が「危機にひんしている」という位置付けによって観光客を誘致する魅力が薄れることを懸念し、ロビー活動に力を入れたことで回避された。
国際自然保護連合によれば、それ以降も深刻な海水温上昇により2016年、2017年、2020年とサンゴの白化現象が生じ、サンゴ礁の健全性はさらに損なわれ、そこで生育する動物や鳥類、海洋個体群に影響を与えた。
ユネスコの委員会は、グレートバリアリーフが大切にしてきた世界遺産としてのステータスを維持する展望が暗くなっている以上、気候変動の影響に対応するための行動が必要だとしている。
スーザン・レイ豪環境相は、政府はこの勧告に異議を申し立てる予定だと述べ、勧告は「十分な協議を経ず、(略)問題のある手法」に基づくものだとした。
環境相は声明で、「世界のサンゴ礁にとって、グローバルな気候変動が単独では最大の脅威であることには同意するが、世界で最も優れた管理のもとにあるサンゴ礁を『危機遺産』の登録候補とすることは、私たちの観点では、誤りである」と説明した。
マードック大学で環境科学を教えるジョー・フォンテイン講師は、ユネスコの動きは「決定的瞬間」だと評する。ふだんは内輪揉めに忙殺されているオーストラリアの政治家に対する外圧になるからだ。
「連邦レベルの気候変動対策が一斉に変更され、連邦政府とクイーンズランド州政府が協調して水質問題に取り組むことを心から期待する」と語った。
<気候変動対策で出遅れるオーストラリア>
オーストラリアに対して気候変動対策の強化を求める国際的な声は強まっており、ユネスコの警告はこれを後押しするものだ。世界自然保護基金(WWF)オーストラリアの海洋部門責任者リチャード・レック氏によれば、同国政府の気候変動対策は、温暖化ガス排出量を正味ゼロにする確固たる「ネットゼロ」目標がなく、手ぬるいと批判されているという。
レック氏は「今回の勧告は、(略)気候変動対策におけるオーストラリアの出遅れを批判しはじめた、国際社会の全般的な風潮に一致している」と指摘。米英両国の政府によるコメントや、主要7カ国(G7)首脳会議に言及した。
同氏によると、ユネスコ勧告のショックが薄れてくれば、オーストラリア政府もこうした動きが科学に基づくものであり、行動の必要性を真剣に受け止めるようになることが期待されるという。
環境保護団体や研究者らはオーストラリアに対し、「カーボン・ニュートラル」目標を設定し、地球温暖化の抑制に向けた2015年パリ協定に沿った政策を導入するよう促している。
オーストラリア海洋保護協会のコンサルタント、イモジェン・ゼトーベン氏は「世界的な気温上昇を1.5度以内に抑えるというサンゴ礁にとって死活的に重要な目標を守るため、オーストラリアは相応の責任を果たす必要がある」と語った。
「気候変動対策をグレートバリアリーフの長期的な生存可能性に結びつけることが非常に大切だ」
<サンゴ礁を守る責任>
オーストラリアは石炭火力発電に依存しており、国民1人あたりの二酸化炭素排出量は世界有数の水準となっている。
研究者による非営利のコンソーシアム「クライメート・アクション・トラッカー」の分析によれば、オーストラリアの現行の気候変動対策は「不十分」とされている。
豪気候評議会に参加する科学者のレスリー・ヒューズ教授(マッコーリー大学、生物学)は、同国政府は「世界で最も貴重かつ象徴的な生態系の1つ」を維持管理する責任を負っていると指摘した。
「だが政府は相変わらず化石燃料を支持しており、効果的な気候変動対策を講じていない。つまり、その責任を果たすという点でまったく失敗している」との見解を示した。
「世界は前進しているのにオーストラリアは立ち止まったままだ。国際社会はすぐにしびれを切らしてしまう」
もっとも環境保護活動家らは、国内での政治的リスクがあるため、ユネスコの勧告を受けてオーストラリア政府が迅速に行動するとは考えにくいものの、中長期的には変化が期待できると話している。
彼らは政府に対し、新たな化石燃料資源の開発を禁止し、天然ガス火力発電に頼った新型コロナウイルス感染症(COVID-19)からの復興計画を放棄することを呼びかけ、再生可能エネルギーと電気自動車への投資・利用促進を求めている。
前出のレック氏は「オーストラリアが将来的に再生可能エネルギーを採用することは避けられない。つまり、将来的には今よりもはるかに真剣に気候変動対策に取り組むという意味だ」と語った。
(翻訳:エァクレーレン)
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