時田 綾子
英国のエリザベス女王の治世を描くNetflix『ザ・クラウン』は、2020年11月からシーズン4が配信されている。いよいよダイアナが登場する、待ちに待ったシーズン4とあって人気も上々。さらに、第78回ゴールデングローブ賞のドラマ部門主演男優賞、主演女優賞、助演女優賞、作品賞の受賞もさることながら、シーズン4の描き方に王室高位メンバーがご立腹だと報じられるなど話題性も十分だ。
鮮やかな対比で描き出す激動の80年代
エリザベス(オリヴィア・コールマン)とフィリップ(トビアス・メンジーズ)の結婚から始まった壮大なドラマは、1980年代へ。シーズン4は、1979年のサッチャー(ジリアン・アンダーソン)の首相就任と、フィリップの叔父マウントバッテンの爆死で幕を開け、サッチャー辞任までの約10年を描く。 この間、北アイルランド問題やフォークランド紛争、新自由主義の推進による社会の分断など続々と英国内には困難が押し寄せるが、皇太子チャールズ(ジョシュ・オコナー)とダイアナ(エマ・コリン)の結婚という慶事もあった。 今シーズンの特徴は、鮮やかな対比にあるだろう。 サッチャーとダイアナ、エリザベスとサッチャー、チャールズとダイアナ、ダイアナとカミラ(エメラルド・フェンネル)、チャールズと弟たち…。それぞれの違いを明快に際立たせることで多くを物語る。 中でも、スコットランドで休暇を過ごす王室から「狩り」に招かれ、戸惑うばかりのサッチャーと、すんなりなじむダイアナの対比は、階級の違いを強調して印象深い。かなりコミカルで、意地悪なエピソードだ。
「不幸な結婚」を暗示するエピソードの数々
ドラマの前半は、チャールズとダイアナの出会いから結婚までが中心となる。 王室のメンバーはダイアナを迎え入れることにOKを出した。チャールズはダイアナにプロポーズするが、カミラを愛することとは別儀だった。 2人の結婚はうまくいかないだろうと予感させることが、次から次へと描かれる。 ダイアナの摂食障害もそのひとつで、かなり早い時期から出現することに驚かされた。食べては吐くというようなシーンがある回には冒頭に警告があるが、それでも制作者が描いたのは、彼女の苦悩の深さを表現するには必要だと考えたのだろう。 だが、つらいシーンばかりではない。各地での熱烈な歓迎ぶりや、優しく弱者に接するダイアナの姿に心温まる思いがする。また、ファッションも大いなる見どころ。ウエディングドレスをはじめとする衣装の再現度も素晴らしいが、むしろ、ワンショルダーのドレスなど、似て非なるドラマオリジナルのものが魅力的に映った。 そしてもう一人、初の女性首相サッチャーにも注目しなければならない。自身の努力と勤勉さを前面に打ち出し、他人にもそれを求めるサッチャー。政治家としてはかなり強引で退くことを考えない鉄の女だが、その合間に見せる主婦の顔、母の顔はちょっと意外性がある。「時間を無駄にできない」とせわしなく動く姿に、働く女性は共感しそうだし、息子を露骨にかわいがるエピソードでは、無視された娘のいらだちがリアルだ。 さらに、貫禄を増したエリザベスと自説を曲げないサッチャーのやりとりは迫力満点。南アフリカへの経済制裁をめぐる女王と首相の対立の行方はスリリングで、一番の見せ場となっている。
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壮大な
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