海が水で満たされているとは限りません。 土星の衛星タイタンには、水ではなく液体メタンの海があります。地表面に液体が存在している天体は、太陽系で知られている限りは地球とタイタンのみ。 【全画像をみる】水がない海もあるんだ! 土星の衛星タイタンには水深300メートルのメタンの海が広がっている 地球上のメタンは都市ガスとして、また牛のげっぷに含まれる温室効果ガスとして知られる無色透明な気体ですが、地表の温度が-180℃しかないタイタンでは主に液体として存在し、海や湖を満たしています。 そしてその液体メタンの海からメタンが蒸発してタイタンの大気に取り込まれ、凝縮して雲となり、やがてはメタンの雨となって地表に降り注いでいます。地球においての水循環と同じように、タイタンでは炭化水素循環が起きているんですね。 最新の研究では、タイタンの海の深さが最大300メートルにも及ぶことが分かったそうです。NASAはゆくゆくこのメタンの海に潜水艦を送り込む計画を構想中だとか。タイタンのオレンジ色の空の下、液体メタンの海中探査するだなんて聞いただけでもワクワクしませんか?
タイタンはこんなところ
土星の衛星は65個も発見されていますが、その中で最も大きいのがタイタンで、直径は約5,150km。水星(直径約4,850km)より大きいです。また、タイタンは濃い大気に覆われていることから、その大きさと大気の濃さも相まって「惑星のような衛星」と表現されることもあります。 タイタンの大気の主成分は地球と同じく窒素で、メタンの含有率は2%ほど。この大気中のメタンと窒素が化学反応を起こして高分子有機化合物を生成しているため、オレンジ色のもやがタイタン全体をすっぽりと覆ってしまっていて、地表面を観察するのはなかなか困難でした。
カッシーニとホイヘンスの偉業
そこに登場したのがNASAの探査機カッシーニです。1997年に打ち上げられ、2004年には土星の周回軌道に乗り、運用停止となった2017年まで土星や土星の衛星の鮮明な観測データをせっせと集めてくれました。さらにカッシーニに積み込まれていたESAの小型探査機ホイヘンスは、カッシーニから切り離されてタイタンの地表に見事着陸し、これまでもやに包まれていた世界をあらわにしてくれました。 カッシーニには高度計も搭載されていました。2014年8月21日にはタイタンの地表からわずか970kmにまで接近し、クラーケン海にレーダーを放射して観測を行いました。クラーケン海(Kraken Mare)はタイタンで最も大きな水域で、タイタンの表面上の液体の80%を保有しています。
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