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Tuesday, August 18, 2020

浮世絵の300年にわたる壮大な変遷を、『The UKIYO-E 2020 − 日本三大浮世絵コレクション』で体感。 - Pen-Online

左は『東海道五拾三次之内 箱根 湖水図』歌川広重 日本浮世絵博物館(前期展示)。説明的な名所絵から発展し、季節や気候の描写による美的感覚、さらには旅の風情にあふれる風景画が江戸末期に花開いた。

太田記念美術館、日本浮世絵博物館、平木浮世絵財団という日本屈指の浮世絵コレクションが一堂に会した壮大な浮世絵展が東京都美術館で開催されている。浮世絵初期の菱川師宣から美人画の喜多川歌麿、さらに葛飾北斎や歌川広重といったスターまでおよそ60名の浮世絵師による455点が前期・後期にわたり集結しているのだ。

展示は「第一章 初期浮世絵」からスタートする。落ち着いた印象の紅色の壁に並ぶのは、菱川師宣や鳥居清倍ら17世紀後半から18世紀にかけて制作された作品。「浮世絵」と聞いて多くの人が思い浮かべるだろう色鮮やかでダイナミックなものからするとおとなしい印象かもしれないが、展示を追っていくと、浮世絵の表現が短い期間に大きく展開したことがわかる。墨一色の版による「墨摺絵」に始まり、筆彩色を施した「丹絵」や「紅絵」の誕生へ。背景はまだ無彩色のものが多いが、中国からの影響を思わせる絵画から独自の表現へと広がっていく。

「第二章 錦絵の誕生」に進むと、多色摺の版画の数々が登場する。18世期半ば、発展のきっかけとなったのは、趣味人の間で絵暦を私的な摺物として制作し、交換することの流行だという。そうした流行が起こったのは、幕府が統治して社会が落ち着き、平和の中で浮世を楽しむ庶民が増えたことの証だろう。細密な描写が施された錦絵の数々を見ていると、優雅に着こなした人々の様子からも江戸の豊かさが伝わってくる。

歌麿の美人画、東洲斎写楽や歌川豊国による「キメ顔」の役者絵の表情やメイク、装いも楽しいが、やはり最後の「第五章 自然描写と物語の世界」、北斎による『冨嶽三十六景』や広重『東海道五拾三次之内』から多くの絵が並ぶ展示は圧巻だ。平和で豊かな時代が300年続き、その社会状況が浮世絵の発展を支え、世界的に影響力をもつ確固たる表現力を備えるに至ったのだ。

3フロアにまたがる展示を堪能し、疲労と興奮が混じり合う心地よい“鑑賞後感”を味わうならば、ぜひ東京都美術館に足を運んで欲しい。

『立美人』懐月堂度繁 重要美術品 平木浮世絵財団(前期展示)。正徳期(1711〜1716年)ごろに制作されたとされる墨一色の版による墨摺絵。歌舞伎などの大衆文化の発展に寄り添うようにして、浮世絵も筆彩色や多色摺へと色鮮やかに展開する。

『おし絵形 春駒』 勝川春英 日本浮世絵博物館(前期展示)。役者絵や美人画の迫力ある大判絵が増えた寛政期(1789〜1801)の初期、寛政4〜6年に発表された作品。大和色で塗り分けられた壁の色と、開口部から展示の先をチラッと見せて期待を煽る壁面など、3フロアにわたって膨大な点数を展示する空間デザインも凝っている。

手前は『青楼七小町 大文字屋内多賀袖』喜多川歌麿 太田記念美術館(前期展示)。大首絵の様式でさまざまな階層の女性たちを描いた歌麿。表情や仕草のバリエーションは枚挙にいとまがなく、またスッと立つ全身像や群像など、美人画を無限に描ける職人だったことがわかる。

ともに『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』葛飾北斎。手前が太田記念美術館所蔵のもので、奥が日本浮世絵博物館所蔵。“The Great Wave”として世界で最も知られる浮世絵版画である北斎作品は、当然ながら3コレクションすべてが所有。前期に展示されている2館の所蔵作品に代わって、後期は浮世絵財団の同作品が展示される。

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August 17, 2020 at 02:00PM
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