この事態の中心となったのはジョン・ミンダというエクアドル人男性と、アトレティコ・モレリアというメキシコ2部に所属するクラブ。
大小様々なメキシコメディアが今月半ばに、このジョン・ミンダという人物をクラブの新加入選手として報道した。記事には本拠地エスタディオ・モレロスのピッチ内で撮られたミンダとあるメディアの記者とのショットも掲載されており、高い信憑性を示すものだった。
これ以前に、アトレティコ・モレリアのスポーツ・ディレクターが地元メディア『エコス・デル・キンセオ』に対し、新加入選手が近づいていることを示唆していたため、このジョン・ミンダがそうであると信じ込まれていた。
しかし、事実は全く異なっていた。メキシコはモレリアのジャーナリスト、ミゲル・ガルシア氏が調べたところ、そのようなサッカー選手は存在せず、また『ESPN』のメキシコ支社のオマール・フローレス氏はジョン・ミンダの連絡先を手に入れたが、電話はすぐに不通になってしまったという。加えてアトレティコ・モレイラ側も「全く知らない」と否定。
だが、事態を重く見たジョン・ミンダ氏本人が、アトレティコ・モレリアのファンへの謝罪と事実確認のため『ESPN』のインタビューに答えた。そしてミンダ氏によると、写真が撮られた当日は、ファンとしてスタジアムを訪問していただけで、メディアの勘違いによって事が想像以上に大きくなってしまったというのだ。
「私がスタジアムに行くと、外で記者の方が待っていました。それは『ソル・デ・モレリア』の記者でした」
「私は控えめな性格なのでインタビューに答えることにしました。誰もが知っているように、モレリアという街とクラブはそこまで結びついていません。だから私はアトレティコ・モレリアのファンに向けて、我々は喜びを取り戻すことができる、モレリアにはその価値があるとメッセージを発したんです」
おそらく親切心でインタビューに答えたのだろうが、これが後に壮大な勘違いに繋がることになってしまったようだ。22歳のジョン・ミンダさんは以前にアトレティコ・モレイラなどのプロチームのトライアルを受けたことはあるが、プロにはなれなかったという。ユース時代には、マンチェスター・ユナイテッドで活躍した同国のスター、アントニオ・バレンシアも所属していたナシオナルの下部組織にいたが、肘のケガで思うようなキャリアを積むことができなかったと伝えられている。
なお、『transfermarkt』には“Jhon Minda”という同名の選手が登録されているが、今回のジョン・ミンダ氏とは全くの別人。本名はジョン・スターリン・ミンダ・ガルシアという、エクアドルのクンバヤに所属する34歳のエクアドル人プレーヤーだ。
メディアの思い込みによって思わぬ事態に巻き込まれてしまったアトレティコ・モレイラは、メキシコ1部リーグで優勝経験を持つ1950年創立のクラブ。この度の新型コロナウイルスの影響で経営難に陥り、新たなパトロンとしてミチョアカン州政府からシナロア州政府に乗り換えたことにより、本拠地もモレイラからマサトランへ移転。これに伴いクラブ名も「マサトランFC」に変更することに。クラブ創設70周年を2日後に控える今年6月2日の出来事だった。
しかしその後、Liga MXは同月26日にアトレティコ・サカテペックの本拠地をモレロスのサカテペックからモレリアに移転し、クラブ名もアトレティコ・モレリアと変更することを発表。新たなアトレティコ・モレリアが発足した。
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July 22, 2020 at 11:03PM
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