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Sunday, March 1, 2020

それぞれの視点から「選択」の是非を問う壮大な幻想叙事詩 - カンフェティ

芝居という範疇に捉われず、アクション・パフォーマンスを盛り込んだエンターテインメント集団、team WORLDが2012年9月に上演し大好評を博したファンタジー大河『BLUEDESTINY』新シリーズ化作品の第6弾は、実社会にも通じる『取捨選択の条理』を個性豊かな登場人物達の“選択”によって描く壮大な幻想叙事詩だ。今回は脚本・演出の三浦佑介に、4作連続出演となる女優の澤木柚季江、プロデューサーのtosh1を加え、シリーズを通しての思い、作品の魅力を語ってもらった。

インタビュー写真

人間が決断を迫られた時にどうするか?

――― 壮大なサーガの中で本作の位置づけを教えてください。

三浦「全体の作品としては6作目になります。今作品は去年の7月公演の内容から直接続く物語ですが、初演は2012年の9月だったので、そこから約8年の間に不定期な公演だったこともあり、脱落するファンの方もいるぐらいですが、そのファンの方が戻って来られて、且つ初めての方も入りやすいような入り口にしたいという思いもあります。

単純に言えば、それぞれ機械と魔法と拳の力を持つ3大国が争う世界で、今回のメインストーリーとしては機械の国の内紛を描いています。機械の国は軍事国家で、そのトップを巡って色んな人が争うという話です。基本的にこの国では一般市民が戦わないという選択をしていて、『九孔雀洞衆(くじゃどうしゅう)』や『六芒星(ろくぼうせい)』といった戦闘能力を身につけた特殊集団が戦うというシステムです。その中でも革新派と保守派に分かれていて、そこに魔法の国からのスパイが紛れ込んでと、他国を巻き込んだ伏線が張り巡らされていきます。

今回脚本を書くに当たって、全キャラクターが選択を迫られて、その選択によって物語が変わっていくという仕掛けをしています。人間が選択を迫られた際にどう決断するか?というのが大きな意図になっています。あとはこの世界にはびこる“違和感”を大切にしていて、それ自体が大きな謎になっています。平和に向かっていくための物語なのですが、絶対に人は争ってしまうという結論が包まれています。ファンタジーというと上辺だけに走りそうですが、人間が持つ愚かさに向きあいながら描いているつもりです。ある意味、ギリシャ悲劇やシェイクスピアを演出するような気持ちで演出していこうと思っています」

第一作が最新作!?

――― 澤木さんは4作連続の出演となりますが、本作の魅力と役を演じる上で大切にしたい事はありますか?

澤木「元々、ファンタジーが好きというのもありますが、初演を観させて頂いてからはプロデューサーのtosh1君の作る世界を魅力的に感じています。第1作が一番新しい話でそこから一気にその前にさかのぼって、そこに至るまでの経緯をつむいでいくという流れになっています。スターウォーズ形式というか(笑)、斬新なストーリー展開にも心を捕まれましたね。

インタビュー写真

登場人物がそれぞれ自分の正義を持ち、対立しながらも各々が平和を目指して生きているという世界の中で、ベニキアという国の六芒星という機関に所属しているマリアというキャラクターを演じます。理想主義を掲げつつも実際にやっていることは冷徹で過激だったりする人物です。マリアは国の中枢にいて、大局を観て行動をしないといけない状況にいながらも、人としての弱さから、身近な人に何かをしたいという行動に走ってしまい、目的を成し遂げられないというジレンマが1つの見所になっていくのかなと思います。偉い立場にいるのに人間的な欠陥を持つということを意識しながら演じたいですね」

三浦「目の前の人間を救う為に、100人を殺していいのか?という話ですよね。目の前にいる人間を見捨てられないのもマリアの弱さで、人情味に溢れながらも、冷徹な行動をしてしまうという。理性的な部分と感情的な部分が共存しているよね」

澤木「自分と重なる部分もありますね。意外と些細な事で感情的になってしまうことでしょうか(笑)。マリアは出てくる度に選択を迫られている様な人物なので、そのギリギリの精神状態の中でどんな決断を下すのか、どんな葛藤があるのかを伝えられるように作りたいです」

原作はなく、舞台が第一発信

――― ファンタジー作品が多くある中で、『BLUE DESTINY』の放つ魅力はどんなものがありますか?

tosh1「よくあるファンタジー物や2.5次元系の作品と比べると、原作自体がなく、僕の頭の中の世界を描いているのがこのシリーズになります。初演の8年前から見ると、漫画やアニメを原作とした作品は増えましたが、舞台の第一発信にこだわりたいところです。また原作のキャラクターと舞台とのギャップがないところも良い所でしょうか。観劇した第一印象がそのままお客さんの中のキャラクターや作品のイメージに反映されるという意味では、楽しみ方としては新しいと思います。

演じてくださる役者さん達の努力でキャラクターの魅力が何倍にもなるところはブルデスならではだと思います。三浦さん、澤木さんとは10年以上のお付き合いをさせてもらっていて、この作品を作るにあたっては欠かせない人物だと思っているので本当に心強いですね」

三浦「僕は劇団よりも外部演出が多いので、プロデューサーがどういう世界を描きたいのかを丹念に聞き出すという作業を大切にしています。それこそ稽古の最中でも方向性があっているのかの確認はしますね。言わば演出家の最初のお客であり、一番リスクを背負っているのがプロデューサーなので、やりたい世界観を具現化していくのが仕事だと思っています。それでもいくら言葉にしてもズレは生じるので、細かくディスカッションしていくのは大事ですよね」

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tosh1「三浦さんは単純にお付き合いが長いというだけではなくて、この作品をどの様に見せたいか、どういう事をやりかいかをしっかり確認してくれた上で、それから実現化へ向けて作業してくださるので、僕も安心して色々アイデアをぶつけることができます。まず自分たちが楽しんで物を作れたらとお互いが思ってできているのは嬉しいですね」

脇役が魅力的な作品

――― 登場するキャラクター数も多いそうですね。

tosh1「今、軽く40人はいます。各話に登場するのは15人前後ですが、伏線もありますし、名前だけが登場することもあるので、ここも繋がっていたのかという人物相関も楽しめると思います。観る人によって感情移入をするキャラクターもそれぞれいると思うので、お客さんの意見も大事にしながら作品作りに生かしています」

三浦「この作品は脇も魅力があるのが特徴だと言えます。でもあまりキャラクターが強いのがいると、脇役で入れたつもりがその人が中心になってしまうので、少し抑えたりします(笑)。それでも予想外に人気になることはなくて、稽古場でもああ、この役厚みが増したなと思うとやっぱり人気が出ますからね。今回、マリアは脇に位置するので、動けるし厚みは増しますよね。主役は進行を任されている関係から、どうしてもストーリーの奴隷になってしまうので、そこはマリアにも期待しています」

――― 最後に読者の方へメッセージをお願いします。

三浦「ファンタジーですが武器がないので、アクション自体は相当泥臭いんですね。馬乗りになって格闘するようなシーンも多く出てきます。勿論、カッコいいアクションもありますが、中核になるのが人と人の魂のぶつかり合いなので、その泥臭い様に是非注目してもらいたいです」

澤木「キャラクターがいい人がいないんですよね。真っ直ぐ生きたいけど、そう生きられない人達に着目してもらいたいですね。いい一面だけでなく、色んな面がある。ファンタジーとはいえ、実世界の私たちと同じような人間が生きている作品だと思うので、親近感を持って観て頂けたら嬉しいです」

(取材・文&撮影:小笠原大介)

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