"新しい酒米を作る"という壮大な目標を掲げ、神戸・灘の酒造メーカー「沢の鶴」と農業機械メーカー「ヤンマー」がタッグを組んで始まった「酒米プロジェクト」。2020年3月16日(月)には、プロジェクトの最新の成果として「沢の鶴 X03(エックスゼロスリー)」が発売されます。
発足から5年目、商品化は3作目に突入し、酒米プロジェクトは新たな局面を迎えました。その進化を探るとともに、新たに商品化された「X03」の魅力に迫ります。
高い評価を得た「X01」と「X02」
米にこだわった酒造りを貫いてきた沢の鶴と、全国の農家とネットワークを持ち営農ノウハウを蓄積してきたヤンマー。「日本の米作り、日本の農業を変えたい」という熱い志を同じにして、2016年春に発足した酒米プロジェクトは、2018年に「沢の鶴 X01」の商品化、翌2019年には「沢の鶴 X02」の発売と、着実にステップを踏んできました。
手探りの状態から始まった1年目、2年目の酒造りを、沢の鶴の製造部部長兼総杜氏代行・西向賞雄さんは次のように振り返ります。
「『X01』は、誰も使ったことのない米を使って酒造りをしたことが非常に新鮮でした。約2万種類という膨大な米の中から数種類まで絞って仕込みを行いましたが、初年度だったこともあり量産できず、商品はわずか3カ月ほどで完売しています。
続く『X02』は、米を1品種に絞り込むことで収量を増やし、仕込みの量も増えました。『X01』は400キロの仕込みでしたが、『X02』は3トンの仕込みに成功しています。『X02』はより多くの方に届けられたので、ひとつの商品として成立した手ごたえがありました」
ヤンマーのデザイン戦略室が手掛けた斬新なパッケージデザインも業界内で話題になり、「X01」は2018年度のグッドデザイン賞を受賞。「展示会などでもお客様から『これはなに?』と興味を持ってもらえる。そういう点も含めて、この挑戦は好意的に受け止めていただけたのではないでしょうか」と、西向さんは話します。
同じ米から3種類の「X03」を生み出す
新商品「X03」の特徴は、同じ酒米を使って製法のみを変えた、3種類の商品ラインナップを揃えている点です。複数のバリエーションを実現させるにあたって「社内でも相当話し合った」と西向さんは振り返ります。
「『X03』に使用している原料は、『X02』とまったく同じ品種の酒米です。昨年と同じ酒米で造りを行うにあたって、お客様になにをアピールしたらいいのかと考えた結果、『同じ米でも製法を変えるだけでバリエーションが生まれる点』を伝えようと方向性が定まりました。『X02』の時点で酒造りに適している酒米だとわかっていたので、バリエーションを広げることは楽しみでしたね」
社内からは「バリエーションを持たせるからには、プロジェクトの意義が伝わるものがいい」という意見も出たため、沢の鶴で造っている通常の純米大吟醸と同じ製法で造った「X02」をベースとして、3種類の「X03」を生み出します。
ひとつは「無濾過」。お酒を搾ってから濾過をしないことで、本来の旨味や風味を味わうことができます。
「日本酒は、搾り方を変えるだけでも味わいが変わります。私たちは醸造の技術を磨く中でそのことを熟知していたので、ノウハウを活かす意味でもひとつは無濾過にしようと決めました。『X02』は濾過をしてから仕上げていましたが、『X03 無濾過』は搾った原酒に火入れをして瓶詰めしています」
もうひとつは「袋吊り」。酒袋に醪を入れて吊るし、自然に垂れてくる酒のみを集める搾り方です。
「圧力をかけないことで、雑味のないすっきりとした味わいと華やかな香りのお酒になることから、『X03』に採用することにしました」と西向さん。
最後は「貴醸酒(きじょうしゅ)」です。仕込水の一部に日本酒を用いる、いわば「日本酒で仕込む日本酒」。甘みがあり、濃醇な味わいが特徴です。なんと、沢の鶴から貴醸酒が発売されるのは、これが初めてなんだとか。「X02」と「X03」が同じ酒米を使っていることから発想が浮かんだといいます。
「沢の鶴としては造ったことのないお酒でしたし、一発勝負だったので心配な点もありました。それでも、酒米プロジェクトの醸造の指揮を執る森脇が貴醸酒への知見を持っていたこともあり、挑戦してみることにしたんです。
その結果、個性の異なる3種類が完成しました。同じお米でこれだけバラエティー豊かなお酒ができること自体が驚きだと思うので、飲んでいただければ私たちの取り組みや姿勢を感じてもらえるんじゃないかなと思います」
大学時代の研究が活きた「貴醸酒」の造り
酒米プロジェクトの発足時から醸造面でのリーダーを務めているのが、沢の鶴の製造部杜氏代行・森脇政博さん。森脇さんは「X03」の造りを振り返り、「原料処理がしやすく、より米の特徴が出ている酒になった」と話します。
「『X03』で使っている酒米の品種は『X02』と同じで、山田錦と比べると心白が小さく、中心は固くて外側が柔らかいのが特徴です。そのため、昨年の仕込みではべたつきやすかったのですが、今年は暖冬の影響なのか、べたつきが少なくて扱いやすかったですね。『X03』を仕込んだのと同じ日に、山田錦で別のお酒を仕込んだのですが、それと比べても『X03』はより香りが立ちやすいお酒になりました」
森脇さんは、醸造を学べる学科がある東京農業大学出身。学生時代には日本酒に関する研究をしていたこともあり、「X03 貴醸酒」の商品化にあたって、森脇さんの知見が大いに生かされることになりました。再仕込みによる酒造りは一般的ではなく、日本酒に造詣の深い沢の鶴の社員でも、詳しく知る人が少ない製法だったといいます。
「仕込みに使う酒の量によって極端に甘くなったり辛くなったりするので、その調整には特に気を遣いました。そこは学生時代の研究が最も活かされた点だと思います。個人的に貴醸酒は好きで飲んでいましたが、社内では『今まで飲んだことがなかった』という人がほとんど。今回、初めて商品化したことで、新しい味わいに可能性を感じている社員が多いです」
貴醸酒はしっかりとした甘みが特徴ですが、沢の鶴の基本である食中酒を目指して、サラッとした甘さに抑えたといいます。甘すぎないので食事中はもちろん、スイーツと合わせるのもおすすめとのこと。
香りが華やかな「X03 袋吊り」は、柑橘系など香りが特徴的な食材と相性が良く、まろやかさのある「X03 無濾過」は味がしっかりした料理とも合わせやすい味わいになっています。
透明なボトルに込めた、自信とプライド
こうして揃った3種類の「X03」。パッケージデザインは、「X01」「X02」に引き続き、ヤンマーのデザイン戦略室が担当しています。ボトルカラーは「X01」が黒、「X02」が白をベースにしていましたが、「X03」では初めて中身が見える透明ボトルを採用しました。
西向さんは「それぞれの『X03』の特徴をアピールするため、あえて絶妙な色の違いがわかるようにした」と解説します。
ボトルを正面から見ると、沢の鶴のブランドロゴにヤンマーのコーポレートカラーを掛け合わせたシンボリックな「※」のマークが立体的に浮かび上がります。
「こういう発想もあるのかと驚きました。ぜひ実物を手に取って、角度を変えながら眺めてみていただきたい」と西向さん。デザインのみならず、ヤンマーとのコラボレーションによって刺激を受けることは多いと話します。
「米作りについて、ヤンマーの方が『新しい品種を作るためには、残すことより捨てることの方が大事だ』とおっしゃっていたんです。いい特徴もあるからこの米を残したいと思っても、心を鬼にして、本当にいい米だけを残していくことが大事だと。
米作りというのは非常に奥深いと感じましたし、私たちがよりよいものを追求していく酒造りへの姿勢にも通じるものがあると感じました。今回のプロジェクトは、自分たちのものづくりを改めて見つめ直す機会にもなっているんです」
「長く着実なものづくりを続けていく」
発足から5年目を迎え、「X03」で商品ラインナップの拡充という新たなチャレンジに挑んだ酒米プロジェクト。3種類の「X03」はそれぞれ味わいに違いはあるものの、共通して感じられたのは、スッと抜ける軽快な後味とほのかな余韻。同じ酒米を使ってバラエティー豊かな味わいが表現されており、酒米プロジェクトの進化が伝わります。
発足時に掲げた「山田錦と双璧をなす酒米」という大きな目標にまた一歩近づいたような、酒米が持つポテンシャルの高さを感じることができました。
西向さんは今後の酒米プロジェクトについて、「大きな花火を一発打ち上げる必要はなく、長く着実なものづくりを続けていくことが大事。それこそが、企業と企業のコラボレーションが長く続く秘訣だと考えています」と話します。
沢の鶴とヤンマー、両社の絆の深まりを感じるような「X03」は3月16日(月)に全国で発売開始。3種類の味わいをぜひ楽しんでみてください。
(取材・文/芳賀直美)
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